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第138話 ページ43

『『『行って来まーす。』』』
 玄関から、普段より静かな挨拶が聞こえてくる。
Aは今日一日休む事になり、時間差はあるが、学園に行く面々に声をかけられていた。
何回もドアを開けて別の人が入って来るので、しんぺい神が「来るなら一度に来なさい!」と怒っていた。

「・・・寝てるのか・・・。」
 静かになった家の中で、グルッペンはやっとAの様子を見に来られた。
Aは布団を掛けられて、ベッドで熱に浮かされながら眠っていた。
「・・・トン氏に言ったらしいな。
 君の師匠の名前が分かれば、後は簡単に君の事も師匠の事も分かると。
 ・・・調査は自国じゃないからな、中々進まないよ。」
グルッペンは寝ているAに語りかけながら、近くの椅子を引いてベッドの傍に置き、その椅子に座った。
「・・・過去の事を思い出したくないから、
 必然的に過去に関わる師匠の事も教えられないのだろう。
 奴 隷の辛さは分からない、そんな機会が俺にはなかった。
 だが、その中で疑心暗鬼になる事があったのだろう。
 それとも、師匠に関する事で何かあったのか?・・・推測しか出来ない。」
グルッペンはそう話してから、いつも着けている手袋を脱いでAの頬に優しく触れる。
Aの頬は高熱だと分かる程熱く、額には汗も滲んでいる。
「・・・1週間で、我々は大分君に絆されてしまった。
 どうか君も我々に絆されてはくれないか?なぁ・・・A。」
グルッペンの問いにAは答えず、苦しそうに呼吸をし続けている。

「(・・・そう言えば、そろそろ"交流会"があるな・・・)」
グルッペンはある事を思い出し、Aに触れるのをやめて、手袋を着け直す。
「(よく眠れているようだし、隈は少しずつ薄くなってきている・・・
  これなら、"ドレス"を贈ってあげようか)」
「・・・グルッペン、さん・・・?」
「!すまない、起こしたか?」
「いえ・・・。」
Aがそっと目を開けて此方に顔を向けたので、グルッペンは目を少し丸くさせた。
「愛されてるな、A。
 アイツ等それぞれ反応は違うが柄にもなくソワソワしてたぞ。」
「・・・ゾム、さんから・・・何となく、感じ取ってます・・・。」
Aがそう答えると、グルッペンは小さく笑った。
「明日には熱が下がっているといいな。
 明日にはCランクにランクアップされているだろうから。」
「!本当、ですか・・・?」
「ああ。」
グルッペンが返事をすると、Aは何処か嬉しそうだった。

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作者名:眼目夢子 | 作成日時:2021年10月15日 2時

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