第68話 ページ20
「では、僕はこれで」
むつーは玄関でニッコリと笑って、見送りをするしんぺいにそう言う。
「･･･貴方は、どっちなんですか？
AちゃんはAちゃんとして見ているのか、
それとも･･･“彼女”として見ているのか」
「･･･“彼女”と同じ運命を辿っている、
瓜二つの人ですからねぇ？
僕としては記憶のない“彼女”だと思っていますが･･･
貴方が保護者として慕われている。
そして彼らと面識がなかった。
“彼女”であって“彼女”ではないのでしょうね。
＿いつかの、あの日々を思い出しますよ」
そう話したむつーは、悲しげな表情で笑った。
「･･･お願いします。
Aちゃんには、この事は･･･」
「ええ、分かっています。
どんな運命を辿るかは、あの人次第。
･･･幸福な運命を、辿る事を願っています」
むつーはそう言い残して、軽く会釈をして玄関から出て行った。
しんぺいは深々と頭を下げて、むつーが見えなくなるまで頭を下げ続けた。
「･･･っはー･･･」
しんぺいは頭を上げて、深く息を吐く。
「･･･誰も、覚えていないと思ったのに･･･」
そう呟き、後ろへ振り返って歩き出す。
「(記憶持ちは一体誰･･･？
僕は滅多に他の集団に関わらないから･･･
誰が記憶持ちで、
どこまで記憶があるか分からない･･･
どうやって判断しようか･･･)」
しんぺいは考えている間に、Aの部屋の前まで来ていた。
「･･･Aちゃん、まだ読書中？」
ノックをして部屋の中へ声をかけると、小さな物音がしてすぐに扉が開く。
「しんぺい様っ。
むつー様は帰られたのですか？」
「・・・」
「？しんぺい様？」
明るい表情で出て来てくれたAを見て、しんぺいは考え込む。
何も答えてくれないしんぺいに対して、Aは首を傾げる。
「･･･用事があるらしくてね、帰っちゃった。
あの本で良かった？買って来るの」
「はいっ･･･！
あ、それと結界の緩みがあったので張り直しておきました」
「ホント？ありがとうね」
「いえっ」
しんぺいが微笑んで頭を撫でてあげると、Aは嬉しそうに笑った。
「(･･･Aちゃんは、Aちゃんだよ。
僕の可愛い、大切な娘だよ･･･
お願い、Aちゃん･･･
君だけは、長生きして･･･)」
しんぺいはそんな事を考えて、胸が痛むのに気づかないフリをした。
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眼目夢子(プロフ) - 冬野さん» コメントありがとうございますっ！す、好きと言っていただけてとっても嬉しいです！！応援ありがとうございますっ！！もう少し続きますので、お楽しみに･･･！！ (2022年2月12日 4時) (
レス) id: cd5f0ffb10 (このIDを非表示/違反報告)
冬野(プロフ) - えっｯｯｯｯｯｯｯｯ、神？前々から拝見しておりました好きです応援してます（早口） (2022年2月12日 3時) (レス) @page50 id: d428e74894 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：眼目夢子 | 作成日時：2022年1月31日 1時
