両想いの間。【工藤新一】

｡ 9 ｡ ページ11

貴方side





「ん、蘭？」





タップして電話に出る。




新一といるんじゃないの…？





「もしもし、「Aー！！」蘭…？」





『聞いてよ！新一ってばね、』






「また喧嘩でもしたの？」







「喧嘩じゃなくて！」





声色からして、怒っているわけではなさそうだけど…





『んもう、お父さんにも喧嘩したか？なんて言われて…


Aにも言われるなんて…』





「ごめんごめん。どうかしたの？」






『それが…』





全部聞いた。



途中で新一がいなくなったこと、


それっきり 連絡がつかないこと。





蘭の声のトーンは、すごく落ちていて





「そっか…楽しみにしてたのにね」





『推理バカだよね、ほんとに』






「でも、そんな推理バカを好きになったのは蘭だよ？」






『う…そうなんだけど…』





私も、ね。






「1回行ってみたら？新一の家」





『…うん、そうだね。行ってくる』






「ふふっ、じゃあね」






『ありがと、A』






きっと、今ごろ蘭は新一の家へ向かって


家を飛び出してるんだろうな。




そんなのが、頭に浮かぶ。




ふと、携帯を眺めた。





「私も、掛けていいかな」






家の中に響く、呟いたその言葉。




気づけば、


電話を掛けてしまっていた。





長い機械音。



もうダメか


諦めた直後だった。





『もしもし、A、か…？』





「し、新一…！？」






息切れでもしているのか、妙に途切れ途切れのその声は、


どこか子供っぽい感じがした。




微かに、雨の音が響いている。





「今どこにいるの？」





『……さあな』






「なに、してるの？」






『それより、A。


蘭に、俺のことは気にするなって言っておいてくれないか』







「っ…新一は、蘭蘭って、蘭のことばっかだよね」







『え…？』







「なんでもない。じゃあ、そう言っておくね」





せっかく出てくれたけど、それを蘭に伝える気になれない。




いっか、別に 言わなくて


そんなことまで思ってしまっていた。



新一が家に帰る途中とかなら、そこに蘭も来るだろうし。




やっぱり私、蘭が羨ましいな。



そんなの、もう慣れちゃったけど。




＿＿遠くから、パトカーの音が聞こえる。




「事件…とかかな」





これも、新一が関わっているのだろうか。






‐

｡ 10 ｡→←｡ 8 ｡ (大阪弁訂正)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す