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街中に溢れるクリスマスソング。
今年は何だか、聴いてて飽きてこないのは隣に彼がいるからだろうか。
お目当てのイルミネーションまで、まだあと少し距離がある。繋がれた手は、相変わらず暖かい。見渡す限り周りは、同じようなカップルで溢れているようであった。心の中で、誰かに会わなければいいな、と考えてしまう。
「あっ!見えてきたっすよ!」
「ほんとに青だ…」
彼の指差す先には、一帯が真っ青に染まる異世界のような空間。本当に「青の洞窟」である。
一歩、足を踏み入れればそこは異空間。木々に取り付けられた青色のLEDが、コンクリートにも反射して上を見ても、下を見ても一面青の世界。
「すごい、綺麗…」
「想像以上っすね」
「あっ」と思い出したかのように、携帯を取り出して彼は、自撮りをしようとした。しかし、青い光が反射して綺麗に写らない。自分たちの顔も真っ青になってしまう。
ひと通り、真っ直ぐ歩いてきたところで、洞窟から抜け出した。すぐ近くの公園のベンチに腰掛けると、彼がプレゼントを差し出した。
「定番すぎるんすけど、マフラーっす」
「え、私もマフラーだよ」
彼が選んでくれたのは、真っ白なマフラー。彼女が彼に手渡したのは、紺色のチェック柄のマフラー。早速お互いにつけてみる。
「似合ってるっすよ!」
「四季くんも似合ってる」
思い返してみればこの一年近く、絶対に関わることなんて無いと思っていた彼。いつの間にか、彼に恋をしてしまって逃げたいと何度も思った。けれども、やっぱり彼と話したくて、そばに居たくて。
今、彼は自分の隣で笑っているのだ。
同じクラスの隣の席だった彼は、自分隣で笑顔を見せてくれる。こんな幸せなことがあるなんて、思いもしなかったことだ。
「ありがとう、四季くん」
「どういたしまして!」
マフラーに嬉しそうに顔を埋める彼女。知らないうちに、気付かないうちに、彼女が自分の中で大きなものになっているとは考えもしなかった。
今、彼女は隣で笑っている。
同じクラスの隣の席だった彼女は、自分の隣で笑顔を見せてくれている。触れてしまえば、壊れてしまいそうなほど柔らかい肌や、恥ずかしい時に髪を弄る癖も。全部、愛おしい。
「ねぇA、キスしていいっすか?」
そんな愛しそうな、愛らしい目で見られてNOと答えられるはずがない。小さく、首を縦に振ると少し冷たい彼の手が、頬に触れた。
ほんの少し、軽く触れるだけの口付け。
「やっぱり、もう一回」
ファーストキスは、ちょっとだけ冷たかった、なんて。
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oliver sakura(プロフ) - 四季くんが可愛くて、とても楽しんで読ませていただきました! (2018年12月27日 5時) (レス) id: 10d3582e90 (このIDを非表示/違反報告)
絢 - アニメ始まってからMマスには本当にはまってて・・・こんなすばらしいお話が見れて幸せです!次もがんばってください!楽しみにしてます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
絢 - 初めまして、絢(アヤ)といいます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
ままこ(プロフ) - 若葉松ガールさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると本当に嬉しいです(;_;)頑張ります! (2017年12月7日 18時) (レス) id: dd2edfbc4c (このIDを非表示/違反報告)
若葉松ガール(プロフ) - 完結おめでとうございます!私も最近Mマスにハマりました!1番好きな四季くんの小説が見れてすごく嬉しかったです(*^^*)次の作品も楽しみに待ってます!! (2017年12月1日 16時) (レス) id: 2308de6ede (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ままこ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月14日 20時