▽ ページ12
・
彼の言葉に、耳を疑った。
どんっ、と手に持っていたマイクがソファの上に落ちる。そんなことは絶対に有り得ない。彼が自分のことを好きだなんて、一度も考えたことが無かった。この想いは、自分勝手なものであって決して交わることないものであると。
目を泳がせて動揺する彼女にかける言葉が見つからない。ああ、駄目だったかもしれないなんてマイナス思考が頭の中を掻き乱す。沈黙が続いて、彼女が小さく声を出した。
「い、伊瀬谷くんは、凄くいい人で誰にでも優しくしてくれて、気が利いて、ちょっとぬけちゃってるとこもあるけど、それでも誰かのために一生懸命で」
俯きながら、ぽつりぽつりと彼女は、想いの丈を零してゆく。上手く言葉に出来なくて、当たり障りのない普遍的な言葉でしか表せない自分が、歯痒い。彼は、こんな言葉なんかじゃ表せないんだ。
「えっ、とだから、あの、その」
俯きながら、涙を流す彼女の顔が見ていられなかった。小さく震える肩に手を伸ばし、触れる。びくりと大きく跳ねた彼女は、ゆっくりと顔を上げた。
「ごめんっす」
「ち、違うっ、!!」
笑いながら謝る彼に、今度は自分が想いを伝える。
本当は、本当は嬉しくて泣いているんだって。
「わっ!私も、伊瀬谷くんのこと好きだよっ!」
再び沈黙が訪れる。刹那、ふわりと彼の香りに包まれた。ぎゅうっと抱きしめられ、少しばかり苦しい。甘酸っぱいような、まるで青春の香り、とでも言えるような彼の香り。
「Aっちも、俺のこと好きなんすよね?良かったぁぁ…」
嬉しそうに大好きな笑顔見せる。この笑顔が、何よりも好きで好きで、大好きなんだ。
「Aっち、ううん、A。」
いつもの愛称ではなく、普通に呼ばれた名前にどきりとする。つい、恥ずかしくなってそっぽを向いてしまった。「照れてるんすか〜?」って意地悪そうに笑う彼を、軽く叩く。
やられてばかりじゃ、納得がいかない。
赤くなった顔を向けて、しっかりと彼の目を捉える。
「四季、のこと大好き、っ」
真っ赤に染まっていく彼の顔は、何だか愛おしい、なんて。
89人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
oliver sakura(プロフ) - 四季くんが可愛くて、とても楽しんで読ませていただきました! (2018年12月27日 5時) (レス) id: 10d3582e90 (このIDを非表示/違反報告)
絢 - アニメ始まってからMマスには本当にはまってて・・・こんなすばらしいお話が見れて幸せです!次もがんばってください!楽しみにしてます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
絢 - 初めまして、絢(アヤ)といいます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
ままこ(プロフ) - 若葉松ガールさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると本当に嬉しいです(;_;)頑張ります! (2017年12月7日 18時) (レス) id: dd2edfbc4c (このIDを非表示/違反報告)
若葉松ガール(プロフ) - 完結おめでとうございます!私も最近Mマスにハマりました!1番好きな四季くんの小説が見れてすごく嬉しかったです(*^^*)次の作品も楽しみに待ってます!! (2017年12月1日 16時) (レス) id: 2308de6ede (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ままこ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年11月14日 20時