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夏休みの夏期講習で、学校を訪れていた日。

何日かぶりに、彼に会った。陽気に「久しぶりっすね!」と手を振る彼に、控えめに手を振り返す。すると、何かを思い出したのかゴソゴソと鞄の中を漁り始める。目の前に差し出してきたのは、ライブのチケットであった。

「これ!オレたちのライブっす!Aっちに見に来て欲しいっす!」

チケットを手に取ると、嬉しそうに笑った。自分に渡す必要などないのに、どうして自分なのだろう。他にも仲の良い友人はいるはずなのに。

日付は、二週間後であった。どうやら、デビューライブらしい。ライブなんて殆ど行かない彼女にとって、やはり少し嬉しいものであった。早く、ライブを見に行きたいなんて考えてしまう。

「めちゃくちゃハイパーメガ頑張るっすから!」
「うん、頑張ってね」

いつもより、緊張した面持ちでそう告げた。

あれこれしているうちに、あっという間にライブの日になっていた。会場は、熱気で溢れかえっており、あまりの熱量に圧倒されてしまう。指定されたところは、想像よりステージに近く、彼の歌ってる姿が間近に見える。

歌っている彼が、彼女の姿に気付いたのかバチンとウインクをひとつ。何をやっているんだ、と思いながら速まる心臓を無理やり押さえつけることに精一杯である。

意外と格好よくて、思っていたよりも全然歌が上手くて、本当に彼は、アイドルなんだと実感させられた。何よりもこの黄色い声援がそれを物語っている。

「かっ、こいい……」

こんなの馬鹿馬鹿しい。あれだけ友人に否定し続けたのに、落ちるのは一瞬だ。堪えようとして、踏みとどまろうとして、どうにかして押さえつけようとしているのに。

彼女の恋心は、水面に広がる波紋のようにあっという間に胸の内を侵食していった。

もう、彼と合わせる顔がない。今、彼の顔を見てしまったらどんな態度を取ってしまうか、自分でも分からないのだ。恋なんてしたことないにも等しいくらいの自分が、どうすればいいかなんて、分かるはずもない。

ぎゅうっと締め付けられる心臓の痛みと、体中に響く心拍が煩い。何も知らない、こんな彼の姿は知らない。こんな自分は知らない、今更彼が好きだなんてそんなの信じたくない。

彼を見る度に、広がるぬくもりとこだまする心臓の音は、恋のせいなんかじゃないのだ。

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設定タグ:アイドルマスターSideM , Mマス , 伊瀬谷四季   
作品ジャンル:恋愛
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oliver sakura(プロフ) - 四季くんが可愛くて、とても楽しんで読ませていただきました! (2018年12月27日 5時) (レス) id: 10d3582e90 (このIDを非表示/違反報告)
- アニメ始まってからMマスには本当にはまってて・・・こんなすばらしいお話が見れて幸せです!次もがんばってください!楽しみにしてます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
- 初めまして、絢(アヤ)といいます! (2017年12月11日 18時) (レス) id: fc580346b2 (このIDを非表示/違反報告)
ままこ(プロフ) - 若葉松ガールさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると本当に嬉しいです(;_;)頑張ります! (2017年12月7日 18時) (レス) id: dd2edfbc4c (このIDを非表示/違反報告)
若葉松ガール(プロフ) - 完結おめでとうございます!私も最近Mマスにハマりました!1番好きな四季くんの小説が見れてすごく嬉しかったです(*^^*)次の作品も楽しみに待ってます!! (2017年12月1日 16時) (レス) id: 2308de6ede (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ままこ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年11月14日 20時

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