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「お願いします!!彼女には黙っててください!!」
土下座をする勢いで頼み込むシンイチを見下ろす2人。
タロウが何も言わないので、仕方なくマーコが口を開く。
「とりあえず、なんであんな嘘ついてるの?」
はぁ、とため息をついたシンイチがぽつぽつと話し始めた。
「彼女、お金持ちの家のお嬢さんなんすよ。トビの俺となんて釣り合いっこない。でも、諦めきれなくて・・・前の日にたまたま見かけたポスターに、試合に勝ったら賞金300万もらえるって見かけて・・・とっさに嘘ついちまったんです!!」
「そんなのバレるに決まってるじゃん。第一、試合なんて出ないでしょ?」
「それが、エントリーしたら通っちまったんですよ。」
「えぇ!?どうすんの!?」
「どうしましょう・・・あー!!もう、なんでこんなことに・・・!!」
「とにかく!試合までにトレーニングして、形だけは出来る様にしとかなきゃ。勝ち負けは、まぁどうにかなるけどボコボコにされてたら引かれちゃうよ。」
「でも、どうしたら・・・」
「手伝ってあげる!!まずは、走り込みだね!明日の朝、仕事前に土手に集合ー!!いい!?」
ありがとうございます、とぺこぺこしながら帰っていくシンイチを見送って、いまだに何も言わないタロウを突く。
「タロさん、なんでなにも言わないの?」
「・・・お前もお人好しはそれくらいにしとけ。」
「タロさんも、朝来るよね!?」
その言葉には返事をせず、おやすみと背を向けたタロウをマーコは寂しそうに見送った。
次の日の朝、やはりタロウの姿はなかった。
「あの不良サラリーマンはほっといて!行くぞー!!」
自転車で先導するマーコを、必死で追いかけるシンイチ。
果たして、トレーニングとして成立しているのかは分からないが本人たちは至って真剣だ。
土手を往復したところで、座り込むシンイチ。
「ちょっとー!目標の半分だよ?」
「もう・・・っ無理です・・・」
だらしないなぁと、呟いてマーコもその隣に座り込んだ。
「タロウさん・・・俺のこと見限ったんすかね・・・情けないって・・・」
「そんなことないよ。早起き苦手なだけだって。」
「でも、昨日も何も言ってくれなかったっすよ。」
「っ・・・もともと口数多い方じゃないし・・・」
フォローにならないフォローをしたマーコだが、彼女にはそういうことが精一杯だった。
しょんぼりしたまま仕事へ向かうシンイチを見送って、自分も仕事場へ向かった。
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作者名:サリー | 作成日時:2020年10月14日 17時