第343夜 ページ10
深夜の人気のない8階廊下
周りに誰もいないことを十分に確認し、僕は何の変哲もない石壁と対峙する
『(室内園芸、室内園芸、室内園芸……)』
ざっくりとした要望を頭の中で唱えながら壁の前を行ったり来たりする
果たして、3度目の往復のあと扉は現れた
『発生条件見直すべきだよなぁ…はたから見たら不審者だよ』
誰に言うでもないボヤキを垂れ流すと僕は重厚な扉に手を添える
そして重い扉を押し開けて中へと足を踏み入れた
そこは天井から月の光だけが射し込む、こじんまりとした部屋だった
部屋の中央には小さな花壇が1つ。それから青白く仄かに光る不思議な花が慎ましやかに佇んでいた
『やっと咲いてくれたね』
苦節数年
何度も失敗をした
品種改良に品種改良を重ねた、世界にただ一輪の神秘
ユリのような形をした、決してユリではない摩訶不思議な新種
花の傍にしゃがみこみ、そっと花弁を撫でる
後はこれが想定通りの効能をもたらしてくれたら万々歳だ
駄目な時はまた交配を繰り返せばいい。数を増やすことも視野に入れなければ
考えることが多いな、と僕は笑う
ようやく見えた一筋の光に希望は募るばかりだ
寝静まった城の片隅で、僕はひとり肩を揺らして笑うのだった
.
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「A、クリスマス休暇のことなんだけど…」
数日後、城の廊下にて
ちらちらと落ちてくる雪をぼんやり眺めていると、ふと背後から見知った声がかけられた
僕は緩慢な動作で顔だけ振り返る
「……そんなに薄着で寒くないの？」
『やぁジニー。こんにちは』
振り返るとそこにはジニーが眉を寄せて立っていた
12月の冷たい風が放課後で浮き足立った城の廊下を突き抜ける
パーカー一枚だけ身に付けた体に冷風が容赦なく突き刺さった
「…それでクリスマス休暇のことなんだけど、私マクゴナガル先生に伝言を頼まれて…」
そこで言いにくそうに吃るジニー
その顔を見て、僕は小さく笑って首を傾げる
『その反応は"あっちに戻る"ってことで合ってるのかな？』
曖昧な言い方
けれどジニーにはちゃんと伝わったらしく、躊躇するように小さく頷いた
「Aにとってあそこは居心地が悪いと思ったから…」
『まぁ良くはないけど…』
家主の顔を思い出して苦笑を零す
それに釣られるようにジニーもふっ、と小さく息を吹き出した
静かな白が積もってゆく
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
