第363夜 ページ30
「…あなたの祖父、トリトン･ヘルエレガルについてです」
『ブフッ！！』
「へ、ヘルエレガル！？大丈夫ですか！？」
先生の口から出た意外な名前に、僕は驚きの余り紅茶を気管に詰まらせるとゴホゴホと咳き込んだ
突然の奇行じみた反応にマクゴナガル先生が困惑しながら僕の背を擦る
「そんなに驚くようなことでしたか…？」
『いやぁ…、まぁとりあえず続けて…』
「はあ…」
納得しきっていない様子だったが、話が先だと判断したのかマクゴナガル先生が続けた
「トリトン･ヘルエレガル。先代ヘルエレガル当主にして元魔法省副大臣。彼はその血筋にしては珍しく穏健派で、それ故にアトラス･ヘルエレガルとは不仲だったと言われています」
『…うん。それで？』
「彼の行方を知りたいのです」
直球で放たれた言葉に、期待を込めた視線が四方八方から追随する
孫の僕ならば隠遁したトリトン･ヘルエレガルの行方を知っているだろうと誰もが期待に満ちた表情で僕を見た
「彼が引退して早数年。トリトンのいない魔法省は驚く程呆気なく堕落しました。今や魔法省は悪党アトラスの言いなりです」
『一応その息子なんだけど僕』
突っ込むと、先生は慌ててゴホンッと咳払いして話を続けた
「とにかく、闇の軍勢にアトラスという強大な壁がある以上、こちらもそれに対抗し得る力が必要なのです」
『それがトリトン･ヘルエレガルってこと？』
「えぇ。あのアトラスも、単純な力比べではトリトンに適わなかったと聞いています。…彼の力が必要なのです」
宰相としての手腕や交渉力においては、父アトラスに軍配が上がる
けれど先生の言う通り、単純な魔力量、呪文理論の理解、そして技巧などの魔法面においては、祖父トリトンほど優れた者はいないだろう
まあ僕のが上だけど
『なるほど。騎士団って引退した老体を引っ張り出さないといけないくらい追い込まれてんだ？』
「そういうことです」
反論しようと口を開きかけた者が何人かいたが、先生の真っ直ぐな物言いに皆一斉に口を閉じた
へぇ、と相槌を打って紅茶を流し込む
『騎士団の状況は分かった』
カップを置き、僕は神妙そうな面持ちの団員を端から端まで見渡して口を開いた
『………それで、じいちゃんの居場所だけど』
誰かが「じいちゃん…？」と奇っ怪な声で口を挟むのを無視すると、僕はニッと笑みを浮かべて続けた
『…僕も知らん！』
カランと誰かの杖が転がる音が空虚な部屋に響いたのだった
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ぽか - 面白すぎてすぐ読んでしまいました！すごく面白いですし、主人公の病みが出てきてワクワクしてます！完結して欲しい・・・！更新無理せず頑張ってください！ (4月19日 17時) (
レス) @page34 id: 8fb0247eee (このIDを非表示/違反報告)
まど - 読んでて物凄くわくわくしました！言葉や展開の言い回しが素敵で、実際にある国などついつい調べて何時間も費やしてしまいました幸せです。是非完結していただきたい…！無理せず更新頑張ってください！ (1月9日 21時) (レス) @page34 id: 6fc7e82b20 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの - 凄く面白くて一日で見ました！！今から2週目見てきます！！！！更新頑張ってください！！！！ (12月24日 13時) (レス) @page34 id: 49fa55860c (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ - はぁぁ！最高です♡♡また更新してください♡待ってます！！！お体にお気をつけて！ (9月12日 21時) (レス) @page34 id: eb702a756c (このIDを非表示/違反報告)
おパブロで。 - お、面白すぎてイッキ見しちゃった……(ﾟωﾟ)お身体に気を付けて毎秒更新して下さいね！！！！ (9月12日 0時) (レス) @page34 id: e2ea27c298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年12月17日 17時
