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さっきまでの無邪気な少年は禍々しい怪物になっていた。人の形を留めていられないのか、体全体にモヤがかかっている。モヤからは「腹減った、喰いたい」と無機質で幼い声が聞こえる。それが、恐怖を生んでいる。
「……あ」
声未満の声が漏れでた。
気付くと私の視界は天井とそらるで埋まっていて、押し倒された事を知った。床に体を打ち付けたはずなのに痛くないのは多分、そらるが守ってくれたんだろう。
なんでこんなに冷静なのか自分でも不思議だけど、それはパニックになりすぎて頭が働いてないからだと勝手に思っておく。
あの時みたいに首を噛まれる。かぶりつく勢いなのに、やっぱり痛くない。頭がふわふわして、考える事を止めていく。
殺される予定だったんだ、これでいい。
そうして意識を手放そうとした時。
「逃げろって言ったじゃん……」
ボイスチェンジャーを使ったような声。それでもそらるの声だと分かる、独特な声。
モヤが晴れて、会った時と変わらない姿になると、そらるは私の横に寝そべった。
「分からない。どうしてこう苦しいのか、涙が溢れそうなのか。坂田に言われた事は合ってるし間違ってる。きっと、喋っちゃダメだったんだ、係わるべきじゃなかったんだ……」
そらるは思った事をそのまま口に出すように言う。
「坂田に言われた事」が何か知らないけど、これで決心がついた。もとよりお風呂に入っていた時から決めた事。言うタイミングが無かっただけで。
「ねえ、そらる」
「……なに?」
泣いているのか、顔を見られたくなくて、そらるはそっぽを向いた。むしろこの方がいいかもしれない。顔を見られたくない気がしてきた。
「私を殺してよ」
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ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい!あと別エンドとかも。。。 (2021年8月3日 12時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ポップけーき(プロフ) - すばるさん» どうでしょうかね……?まあ「ご想像にお任せします」ってやつです。 (2019年11月28日 18時) (レス) id: ec52782ab2 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - 死にたかったの、私。って...そらるさんはそれ知ってから夢主ちゃん誘拐したのかな?? (2019年11月28日 17時) (レス) id: f38b18c5a9 (このIDを非表示/違反報告)
ポップけーき(プロフ) - ひなた丸さん» そのコメント待ってました!この小説はこれに懸けたと言っても過言ではないので嬉しいです!応援ありがとうございます!! (2019年11月24日 9時) (レス) id: ec52782ab2 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた丸(プロフ) - え、話のタイトル?題名?縦に読んだら…それ知ってから読むと印象変わりますね。これからも頑張ってください! (2019年11月23日 23時) (レス) id: f57b9cbebf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポップけーき | 作者ホームページ:そらるさんになら喰われてもいい。
作成日時:2019年11月10日 13時