∴59 ページ10
∴59__美勇人side
失くした書類を作り直して、始末書に追われるしめに言われた。
なんか嫌な予感がするから、Aを一人にしたくない、と。
しめの嫌な予感って昔から当たるんだけど、
俺も最近Aの様子がおかしいと思ってたところだし
しめのことは置いて先に帰った。
…帰った、っていうか俺の家じゃないんだけど。
AはAで隠し事してるみたいだし
ほんと調子狂う。
龍｢Aが？そんなこと言ったの、｣
美｢そ。なんで俺らが付き合うんだよマジで。｣
言うか迷ったけど言ってしまえば
しめは案の定 悲しそうな顔をする。
龍｢昨日さ、Aが風呂入ってる時 着信があって
チラッと見たら麻木ってやつからだったんだよね。｣
美｢知り合い？｣
龍｢いや、昨日の担当者と同じ名前だったから。｣
__その先方の担当者って誰かわかる？
そう言ったAの言葉を思い出した。
美｢その麻木？がどうかしたの｣
龍｢この間 安井さんと飲んだ時、会ったんだよ。
トイレ出たとこの喫煙所で。
Aのこと知ってて、何となく嫌な予感っていうか｣
美｢なんだよ、昨日から嫌な予感って｣
龍｢俺もわかんねえよ｣
美｢てかしめ、昨日ほんとに書類失くしたの？｣
龍｢俺はちゃんと渡したと思ってるけど
向こうがほら、貰ってないって言ってきたから。
なんか今日も不備がどうのって連絡来てるし帰れそうにないわ｣
しめは少し疲れた顔で、
今日も帰ってAのことよろしく、と肩を叩く。
Aもしめも心配で
誰かそんな俺の心を心配してくんねぇかな。
その後も一週間くらい、しめは先方からありとあらゆるケチを付けられて残業続きだった。
美｢あんな理不尽な言われようなのに、しめは真面目すぎなんだよ
少しはこっちからも言い返せばいいのにさ。｣
俺が愚痴ったところで何も変わらないけど
食事の支度をするAにこうやって話しかける習慣さえできた。
Aはいつも半分くらい聞いてくれてるけど、
今日は鍋を混ぜる手が止まる。
『それ、私のせいかもしれない…』
火を止めて、エプロンを外す。
『ご飯あっためて食べていいから。ちょっと出かけるね』
俺の横を通り過ぎるAの細い手首を掴んだ。
美｢一人で抱えんのもいい加減にして。
何も言わないで行かせないから。｣
『大丈夫、何もない。すぐ帰るよ』
ここであっさり手を離した自分を
俺は死ぬまで後悔することになる。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きらり(プロフ) - 柊ノアさん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます。書き手の方に褒めていただけるのはとても恐縮ですが嬉しいです。更新ペースが遅過ぎますが、完結までぜひお付き合いください。 (2018年5月15日 1時) (
レス) id: b9712d1521 (このIDを非表示/違反報告)
柊ノア(プロフ) - はじめまして。柊ノアです。とても面白いです。私は京本担ですが七五三掛君も好きなので… (2018年3月25日 11時) (レス) id: fcacf34529 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きらり | 作成日時：2018年2月20日 19時
