ビターな林檎＊Ryuya.S. (ページ5)

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『私、は、A…』

龍｢A。警戒しないの？俺のこと。｣

不思議そうに聞いてくるけど、

警戒しないわけが無い、このシチュエーション。

なのに警戒心を持ってない自分自身を警戒する。

龍｢ここは俺の家、みたいなもん。
Aを連れてきたのは、何となくほっとけなかったから、かな。｣

『合鍵、は？』

龍｢なんでだろ、俺もわかんない。｣

鍵渡すのにそれって

相当なバカなの？

なんて思ったけど口には出さないでおく。

何一つ腑に落ちる答えはくれなかったけど

少なくとも悪い人じゃなさそうだし

昨日の夜拾われて救われたのも事実。

龍｢あげるから、その鍵。
俺あんま居ないかもしれないし好きに使っていいよ｣

『ねぇ何者なの？』

龍｢んー何者だろ(笑)｣

また、笑って誤魔化された。

でもその笑った顔が
なんとも言えず魅力的だから

不思議と私の顔も綻んでしまう。

龍｢いつもあんな時間にいるの？｣

『割と、眠れない時は』

龍｢今日は泊まれば？｣

『え？』

龍｢…嫌ならいいけど。｣

嫌なんて、

1ミリも思わなかった。

なんでだろう。

『服だけ、取りに行こうかな。』

龍｢行ってらっしゃい。｣

ふと、人に行ってらっしゃいと言われたのは

もう7年ぶりだと気づいたら

龍也の家を出た途端に

瞼がじわっと熱くなった。

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