ビターな林檎＊Ryuya.S. (ページ21)

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∴21__龍也side

あれから、Aはここに来てない。

心做しか寂しくて

でも俺から連絡するのは何か癪で出来なかった。

女といてこんなに苦痛じゃないなんて久しぶりで

それでも、こうも簡単にあいつを乗り越えていいのか、
そう思って踏み出せないでいる自分もいた。

深夜一時をまわる。

今日も来ないか、もしかして、また公園にいるのかも

2時頃になったら行ってみるか、

って俺めちゃくちゃ女々しいじゃん。

一人虚しくなって、冷蔵庫から缶ビールを出す。

こんな時間に酒飲んだら体にも肌にも悪いけど
たまにはこういう日もあるよね、って。

見てもないテレビを付けたまま、
二本目の缶が空になろうとした時だった。

『おじゃまします…』

玄関が開く音と共に、待ってた人の声。

『ごめん、こんな遅くに。』

龍｢いいよ、いつでも来ていいって言ったの俺だし｣

『1人呑みの邪魔した？』

龍｢いや、Aも飲む？｣

『この前は酒飲むなって言ったじゃん(笑)』

龍｢ウーロン茶あるけど｣

『ばかにしないで』

別に酒くらい、俺も高校の時から飲んでたし。

煙草はどうも合わなくてすぐやめたけど。

〈未成年なのに悪いことばっかしてる、
ほんとやだぁー〉

栗色の細い髪をふわふわさせて、
全然嫌じゃなさそうに嫌がる彼女の姿が

不意に思い出された。

『…泣いてんの？』

我に帰って見上げると、
そこには黒髪の端正な顔つきの女。

美勇人の言う通り、あいつとは正反対だ。

『私やっぱ帰るね。邪魔してごめ_______』

あいつ、
ハルと重ねたわけじゃない。

触れた唇の感覚は、明らかに別人のものだったから。

それでも

ハルに向けていたのと限りなく同じに近く

似た気持ちが俺の中に生まれたのは確かだった。

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