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「お兄ちゃんなんか知らない!ハゲろ!」
それだけ言って踵を返し職員室から出ようとしたら、肩をガシッと掴まれた。痛い。
誰が掴んだかなんて考えなくても分かりきっているだけ、後ろを見るのが怖い。
それでも勇者なAちゃんは満面の笑顔を貼り付けて振り向いた。
「どうかしたんですか?星原先生」
「いやいや、尊敬すべき教師に向かって暴言を吐くような生徒を今見かけてしまったからねー」
「そうなんですかー。そんな生徒は正直者で素晴らしいですよねー」
爽やかに笑い合うあたしとお兄ちゃんに職員室の先生達は巻き込まれたくないとばかりに出て行ってしまった。
兄妹喧嘩勃発か……。今日は負けない。
爽やかな笑い声がゴング代わりに止もうとした。…その瞬間、毎度ながらののんびりとした声が割り込んできた。
「はーい。そこまでですよー」
「「校長……」」
「先生も付けましょうね?星原さんも星原先生も、ここはきょうだい喧嘩をする場じゃないんですよ?弁(ワキマ)えてくださいねー」
今にも飛びかからんとしていたあたし達の間で仲裁に入ってきた校長はお兄ちゃんとあたしの肩を押し、離れさせた。
「……校長お先に失礼します。A、帰るぞ」
「おわっ!?」
首根っこを思いっきり掴まれて一瞬息が止まった。お兄ちゃんはあたしを言葉通りに引きずりながら、職員の駐車場に連れて行った。
「おにっちゃ!!息息息息!!止まっちゃいそう!!」
「あ、悪ぃ」
パッと離されたことによってあたしの肺に新鮮な空気が流れ込んできた。呼吸って素晴らしい。
「早く乗れよ」
「やりぃー♪歩かなくて済むんだっ」
スキップしながらトマトみたいに真っ赤な軽に乗り込んだ。パッソプチプチトマトーのCMで有名なやつ。
「よし、帰るか。そっからお前を絞める」
顔が真っ青になっただろう。ルームミラー越しに見たお兄ちゃんの顔は世間に見せることもできないぐらいに殺気立っていた。
「あああああたし、歩いて帰るっ!!」
ドアを開けようとした瞬間、車は走り出した。
「まあまあ、楽しいドライブにしようぜ?」
誰か助けてください。もうこの際、葎夜でもいいから。欲を言えば倖夜がいいな。
とにもかくにも、この悪魔から逃れる術をください。
「諦めろ」
あたしの願いは虚しくも誰にも届かないまま、真っ赤な軽に乗せられ夕闇に溶けていった――…‥
ラッキーアイテム
革ベルト
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リリア - 私激ハマリしてます!更新頑張ってください! (2018年5月28日 19時) (レス) id: 97c05e3e55 (このIDを非表示/違反報告)
夢叶(プロフ) - 咲月 *さん» お久しぶりです!そのちょっとだけの時に読んでもらえて嬉しいです!言葉通りゆっくりとですが更新し続けるのでよろしくです( ̄∇ ̄*)ゞ (2014年12月15日 12時) (レス) id: 42f54dee88 (このIDを非表示/違反報告)
咲月 *(プロフ) - おおおう!?黙 ちょっとだけ久々に来てみたら! 新しく更新されてる!!!← 夢叶さんお久しぶりですっ( ^o^)Гチンッ 次の更新、楽しみに楽しみに待ってますn((( (2014年9月16日 17時) (携帯から) (レス) id: 7548918c6c (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - この作品とっても面白いです!!今日、1から全部見てきました。更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2014年3月28日 15時) (レス) id: e08c48402a (このIDを非表示/違反報告)
∞プリン ∞ - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい。 (2014年3月21日 22時) (レス) id: 2134f5ebeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢叶 | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/kagurakamuisougo/
作成日時:2012年7月14日 15時