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◇
「今日も雨、か……。」
朝、ポツポツという雨粒の音で目を覚ました。カーテンを開けても外はどんよりとしていて気分までも滅入ってしまいそうですぐにカーテンを閉じた。
まあ、たとえ晴れていようがいつもとなんら変わらない退屈な日を過ごすのだけれど。
「Aちゃんおはよう、ちょっといいかな?」
トントン、とリズムよくノック音がしたかと思えば昨日の看護師さんの声がしたので小さく返事をした。
外から入ってきたのは看護師さんと腕に分厚いファイルを抱えた私の担当医。そう言えば昨日検査の結果について詳しく話があるって言ってたな。
「調子はどう?」
「……普通です」
「検査の結果ではね、ここがほら、君の心臓――」
お医者さんが見せてきたのは私の心臓の写真。それを指差しながら説明をしてくれるけれどまるで他人事のように聞き流してはい、はい、と頷くだけ。
検査の結果が良くなったと言えど私の体を20年も蝕んできた病気がすぐに治るわけもない。
早くこの退屈な話が終わってくれないかな、なんて思い始めてきた頃、聞き流していたはずの話を、いや一つだけ言葉を耳が拾った。
「治るよ」
「……え?」
思わずお医者さんの顔を見る。でもどこか複雑そうなその表情に、あ、違う、とすぐに察した。
「今までも何度も手術をしてきたけれどそれはこれ以上蝕むのを防ぐための手術だった。でも昨日の検査の君の状態を見て、次のステップの手術を施すことが出来る、と判断したんだ」
今までの私には出来なかった手術。でも昨日の検査の変化により新たに受けることのできる手術。
それが成功すればもしかしたら私は本当に治るのかもしれない、でもそう上手く行かないのが残酷なところで、所詮運命というもの。
「成功率はかなり低い…。もしも君が受けたいと言うのなら出来る限りの最善を尽くす。けれど、」
成功率は20パーセント。
自分が覚悟していたものより遥かに低いその数字に思わず手が震えた。
昨日の検査の結果のおかげで新たに私が治るチャンスが巡ってきた、けれどそれも失敗すれば……。
「先生……、私、幸せになりたい……」
頭に浮かぶのは賢ちゃんの笑顔。いつしか彼の笑顔を見なくなった。私がこんなのだから、賢ちゃんを縛り付けてしまったから。
瀬見さんもそうだ。大学で忙しいはずなのに私なんかのために時間を割いてここへ来てくれて。
「幸せになりたい……っ」
涙が溢れて止まらなかった。
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カナエ・リフレッシュ(プロフ) - *夢華*さん» はい!無理の無い程度に頑張って下さいませ!楽しみにしてます!あ、久々ですけど名前略してくれて構いませんよ(笑)それでは応援しております! (2016年12月18日 10時) (レス) id: 28bf1d85d0 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - らるこさん» らるちゃんコメントありがとう(*^^*) 私の尊敬してやまないあなたにそう言ってもらえるとすごく嬉しいです(*ノ∀ノ) ワクワクドキドキをお届けできるような作品になるように精一杯頑張ります! (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - カナエ・リフレッシュさん» カナエ・リフレッシュさんいつもコメントありがとうございます!読者さんをあっと驚かせるような展開にしたいと思っているので、あれこれと予想しながら読んで頂けると嬉しいです(*^^*) これからも更新頑張りますね! (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - 白猫姫さん» お久しぶりー!コメントありがとう、めちゃくちゃ嬉しいです(*^^*) 白布と瀬見さん初めての試みで緊張してるけど自分なりのペースで更新頑張るね!(ノ)´∀`(ヾ) (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
*夢華*(プロフ) - フェイロさん» フェイロさん、コメントありがとうございます!精一杯更新頑張りますね!^ ^ (2016年12月18日 10時) (レス) id: ff4f19ad35 (このIDを非表示/違反報告)
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