君は泣いていた。【岩泉一】

10 ほくろ ページ10

「あ、これ、私と椿です。」


テーブルの上に蘭さんが携帯電話を置いた。

そこの画面に映っていたのは椿と蘭さん。


本当に二人ともそっくりだ…

まるで椿が二人いるみたい。




「 …ほくろ」

「あ、気付かれました？」


画面をジッと見つめた岩ちゃんがそう呟くと

蘭さんは嬉しそうに言った。


ほくろ？

もう一度画面を見直し、二人の顔をよく見ると

椿の右目の目尻にほくろが、

蘭さんは左目の目尻にほくろがあったのだ。


なるほど、これが椿と蘭さんの違いなのか。

こりゃ言われるまでは気付かないな。





「さすがはじめく…、岩泉さん！」

「はじめでいいですよ」

「ごめんなさい、椿がはじめ君って言うもんだから

　私もずっとそう呼んでて。」


「や、全然大丈夫です」



ニコリ、と笑顔を見せる岩ちゃん。

…岩ちゃん的には蘭さんには『はじめ』と

呼んで欲しいんだろう。椿と同じようにね。



.





岩ちゃんは蘭さんのことどう思ってるのかな。

完全に椿の面影と重ねてるだろうけど…

もしかして好意を寄せたりしてる？




でも例えどれだけ似ていようが双子だろうが、

椿は椿。蘭さんは蘭さん。

な、はずなんだけど…。






椿の面影を求め、

１年経った今でも椿のことを思い出しては

涙を流す岩ちゃんにとって、






この出会いは特別なのかも知れないね。

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