今日の歪 2

今日のわんこ　70号 ページ27

後輩はようやく緊張が解けたのか優しく微笑む。

今思うと、その微笑みはどこか見覚えがある。

後輩「はい、分かりました。あと、もう一つご報告が」

お父さん「？なんだ？」

後輩「その隊長に続いてありがたいことに……子供を授かりました。」

お父さん「おー！！」

お母さん「まあ！」

嬉しそうにするが、どこか恥ずかしそうな表情をする後輩に父親と母親は驚喜する。

だが、まだよく理解できてないAは後輩に聞き返す。

A「赤ちゃんができたってこと…？」

後輩「そうだよ、炉ちゃん。」

予想していたことが的中し、遅れてAも大喜びする。

A「赤ちゃん見たい！」

前のめりで言うAだが、後輩はまだお腹の中だよ〜と教える。

お父さん「本当にめでたいな！母さん、ビンをもう一本いいか？」

お母さん「いつもならダメだけど、今回は良い報告が２つも聞けたから今回は良いわよ。」

お父さん「よし！お前も飲め！」

後輩「はい！」

まるで宴のごとく更に盛り上がり、気づいたときには21時を迎えようとしていた。

後輩「それじゃあ失礼します。夜分遅くまですみません。」

お母さん「良いのよ。また、来て？」

時間も時間だからか、Aは少し眠気眼で瞼を擦る。

A「お兄さん…もう帰る…？」

後輩「うん、もう帰らないと。奥さんと赤ちゃんが心配だからね。また来るよ。」

優しく頭を撫でられるのをされるがままにAはうん、と頷く。

お父さん「じゃあ頑張れよ！隊長！」

後輩「はい！あ…それと…先輩…ちょっと…。」

お父さん「？どうした？」

後輩は父親に耳打ちをする。

Aからは何を言っているのか聞こえなかったが、父親は眉間にシワを寄せて表情を暗くする。

A「？」

お父さん「あぁ…分かった。ありがとうな。わざわざ」

後輩「いえ…僕は何もできないので…すみません。」

頭を下げる後輩に母親は良いのよ、気にしないで？と応える。

お父さん「そうだな…。これは俺らの問題だからお前が謝ることじゃない。なんとかする。この生活を守るためにもな…。」

父親はAを抱き抱えて笑顔で後輩を見送る。

お父さん「じゃあな！今度は子供も連れてこい。Aが喜ぶ。」

後輩「…はい。Aちゃん、じゃあね。」

炉「うん、じゃあね！◯◯隊長！」

そう呼ぶと、後輩は嬉しそうに愛しい家族のもとへ帰っていった。



それから１ヶ月が経つ前に、お父さんとお母さんは鬼に殺された。

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