今日の歪 2

今日のわんこ　67号 ページ24

余った時間は4人で世間話をしてあっという間に時間が過ぎていった。

就寝時になると、双子は交代ずつで見張ってもう片方は寝る形になった。

A「なんかごめん…。二人とも…。」

真一「良いんですよ。Aさんはしっかり休んでください。」

真二「兄さんの言う通りですよ。歪は俺らがダメだったときのためにその命捨ててでもAさんを守りきれよ。」

歪「！はい！」

A「やめなさい。」

真一「そういえば、Aさん。奴が来たときに何か言ってませんでしたか？覚えてたらで構いません…。」

真一の問いにAはうつむきながらそのときの桃太郎を思い出すフリをする。

A「うーん…。」

1つだけAの脳内にはっきりと残っている発言があった。

"「それにしても…俺には到底理解できねぇな。アンタ、こんなところとは無縁な人だろ。なんでいつまでもこんなところに居座ってんのかね…。」"

A「(テメェには理解できねぇよ。)」

心の中で相手の返事をしてからAは左右に首を振る。

A「ごめん…何も…。」

申し訳なさそうに頭を下げて両手を合わせる。

真二「しょうがないですよ…。Aさんは被害者なんですから、何も悪くないです。」

真一「弟の言う通りですよ。大丈夫です！俺らが守りますから。」

歪「」コクコク

それから数十分経ってから最初に見張る真一が医務室の電気のスイッチに手を添える。

真一「それじゃあ消しますね。」

医務室の電気を消してAと歪、真二が眠りにつく。

そして、少ししてからかうめき声のような音で歪は目を覚ます。

歪「……？」

横に視線を向けると、Aは固く瞳を閉じながら汗をかいてうなされていた。

歪「Aさん…？」

A「ハァ…ハァ……っ、おかあ……さ……おと…さ…や…め……て……殺さ……で…。」

Aの目尻から涙がこぼれ落ちるのを見て歪は気だるい身体を起こしてAを起こす。

歪「Aさん！Aさん！」

その声に連動するがごとく、ベットの周りを囲っていたカーテンがシャッと真二の手によって開く。

真二「どうした！」

またその声が外まで届いて焦り顔の真一が医務室に飛び込んでくる。

歪「Aさんが！」

うなされていることを訴えると、双子は悲しい表情をさせてそのうちの弟がポツリと呟いた。

真二「そうか…。Aさん…まだ見るんだ…。」

今日のわんこ　68号→←今日のわんこ　66号

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す