バカ ページ33
これからもこの世界で生きていったら、彼女はこうして苦しむのだろう。
この世界にいる限り、酒に逃げるしか道が無いと思ったのかもしれないが、その程度で助かる訳がねぇ。
だけど、もしも、こんな世界じゃなかったら…
光の世界で生きる事が出来たら…
人を殺さない事が当たり前で、笑う事が日常になれたら、Aはこの苦しみから解放されて、幸せになれるんじゃないか…
けど、そこに俺は…
いや、俺の事なんかどうでも良いじゃねぇか。
俺はそう思って、Aに真剣に伝えた。
「光の世界に逃げたいか?」
この後、俺を殴り、酷く傷ついた顔になったAを見て、俺は知った。
『殴って…ごめん。』
そう言って、肩を落として俺から離れようとしたAを、俺は咄嗟に後ろから抱き締めてしまった。
「俺は、お前に苦しんで欲しくねぇ。」
行かないでくれ!
『苦しくない。』
俺は苦しい!
「嘘つくな!」
ごめんな!
『嘘じゃない!』
分かってるよ…けど
「お前は…自由なんだ。光の世界に行きたかったら、行っていいんだ。」
行かないでくれ…
『…中也は…いいの?』
良い訳がねぇだろ!
「…俺は、お前が望む未来が良い。」
俺は、そんな未来なんかより…
『…私は…中也の気持ちを知りたいの。私の為じゃなくて、中也の…』
俺は…お前と…
「俺はお前に苦しんで欲しくねぇ。だから、お前に何度だって言ってやる。光の世界に逃げたいか、そう聞いて、お前が逃げたいと答えたとしたら、俺はお前を逃してやる!」
離したくねぇ!逃したくもねぇ!
『!!…中也は…優し過ぎるんだ…』
…ちげぇよ。
俺は、自分の事で頭がいっぱいだ。
優しくなんかねぇ。
ただ、それでも、お前の幸せを願ってる事は本当だ。
俺はバカだから、俺にそんな力なんかないのに、それでも、お前の事を…幸せに出来たら良かった。
そう思っちまう程、俺はどうしようもなく、
お前が好きだ。
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作者名:クロ | 作成日時:2019年7月13日 1時