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『思ったこと書いただけなんやけどな。
たまたま審査員の方と気おうたんやわ』
運が良かった、でもめっちゃ嬉しいわ。
と表彰後、友達に囲まれて騒がれていたAが言っていた。
読みたかった。
もっとAのことを知りたかった。
国語の先生に聞くと、人権作文は今手元にはないがネットに掲載されていると。
「あの子はええもん書くでなあ。
小説のほうももうちょっと数書いて練習したら、ええとこまでいきそうやけどなあ」
「小説も書いてるんですか?」
これはまだ皆に公表される前の話だ。
成績の良かった俺は少し気に入られていたのか、ダメもとで頼んだら読ませてもらえた。
前話でいったように、写真みたいな文章。
文字数制限を気にしてか
少し無理に話をまとめたような印象もあったが、
16000字。
原稿用紙40枚なんて、聞いただけで億劫になる量の活字がスラスラと入ってきた。
そのあと、Aの小説のことが少し噂になった。
腹いせや妬みからきているとしか思えないくだらない陰口が、いやでも耳に入ってくる。
その時俺は勘違いしていた。
Aは強い人間だから、こんな奴らの言うことなんか気にしていないと。
半年なんてあっという間で、俺もAも稲荷崎高校に進学。
当時、入学式早々俺は絶望していた。
Aとクラスが被らなかった。
そりゃ、うちは7組まであるんだから被るほうが確率が低い。
でも2年からは文系理系に分かれてクラスが編成される。
その文理選択は入試の成績を見て考える。
だが推薦入試は違った。
一般入学生よりも先に入学が決まっているので、
俺はそのテストの結果を見て適当に理系を選んでしまった。
Aと出会う前に。
Aみたいな文学に優れたやつはきっと文系を選択する。
すなわち、三年間クラスが一緒になることはない。
あーもう、最悪。
しかも双子の片割れ、治がAと同じクラスで余計に腹が立った。
一年の間俺は治の教室に通いまくった。
もちろん用なんてない。A目当て。
話しかけることもなく、ただ少し離れた場所から見てるだけだったけど。
「…ね、このクラスにちょっと有名人とかいない?」
「なにで有名なやつ?」
「なんて言ったらいいだろ、なんか、作家?」
「なんやそれ。そないな話聞いたことないわ」
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ツナ缶。(プロフ) - 架奈さん» ありがとうございます!優しいコメントがすごく私の励みになります…!いい作品にできるよう頑張ります! (2021年2月14日 9時) (レス) id: e17d6a7cee (このIDを非表示/違反報告)
架奈(プロフ) - 受験勉強お疲れ様です。無理しない程度に頑張ってください!更新楽しみにしています! (2021年2月13日 9時) (レス) id: 3071dcd1d5 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶。(プロフ) - おかか。ですかさん» 更新遅れてすみません!いつもコメントしてくださって本当に嬉しいです!受験も更新も頑張ります!! (2020年11月14日 12時) (レス) id: e4f51373a6 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶。(プロフ) - りんさん» 楽しみにしてくださっている方がいて本当に嬉しいです!受験が終わるまでは亀更新ですが、気長にお待ち下さい(>_<) (2020年11月14日 12時) (レス) id: e4f51373a6 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか(プロフ) - おー!ずっと更新待ってました!!受験頑張ってください!!月曜日楽しみに待ってます! (2020年11月14日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ缶。 | 作成日時:2020年8月15日 3時