降谷零 中編小説＊2

【秘めた恋】＊上※恋歌ネタ有※ ページ11

『"手離したら……殺すで"』

「(人1)さん！もうやめーや！」

『ふふ、平次くんってば大胆ね』


大阪府警の待合室で平次くんをからかう

この間起こった皐月会の事件を平次くんから聞き出し、平次くんが喋らなかった事を和葉ちゃんから詳しく聞いた


『まるでプロポーズね』


そう言えば少し赤いだけだった褐色の肌が紅葉のように赤く染まる。



まるであの人見たいで胸が痛む



「(人1)さんは…………いや、ええわ」



平次くんが顔を歪めて何かを言おうとするが止めてしまった
この子は頭がいいからもう分かってしまったのかもしれない



平次くんの頭を撫でながら思いを伝える



『会える時に会わないと後悔しちゃうよ』



平次くんは私の目を見て静かに頷いた





平次くんのスマホが鳴り待合室から出ていくと、入れ違いで遠山刑事部長にお弁当を持ってきた和葉ちゃんが戻ってきた。


「平次が来るまでつきおーてや！」


私の事を姉のように慕ってくれる和葉ちゃんはとても可愛らしい
お似合いの二人が早く結ばれることを祈る



『"しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで"……和葉ちゃんらしいね』



心に秘めていても表情や態度でバレちゃって
でも鈍感な平次くんは気づいてない



『二人ならどんな時でも大丈夫ね』



頬を染めて平次くんへの想いを話してくれる和葉ちゃんに聞こえない声で呟いた





平次くんが戻ってきて和葉ちゃんが慌てて話題を変える


「(人1)さんには好きな人おらんの？」

「ちょ！和葉！」

『そうだな



"わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし"



……かな』



目を見開く二人
平次くんは驚いて固まっちゃって
和葉ちゃんはきょとんと首を傾げる



「どうゆー歌？」

『ふふ、知らなくても良いのよ』



私の恋は誰にも言えない

誰も知らなくていい

心の奥底で自分の意思とは関係なく
流れて止まらない涙は海を作って




私を溺れさせる





「私ね。ここで良かったよ」





警察庁から大阪府警に飛ばされて5年
あの人に会えなくなってもう5度目の秋


都内ならきっと会いに行ってしまうから

大阪のここなら会いたいときに会えない





それでいい




今年の秋はいつもよりも
鮮やかに染まる紅葉



まるで熱い想いを告げているよう






私の想いは告げられない









「(人1)…………頼む。ここを離れてくれ」









あの人の辛そうな顔に頷くしか出来なかった

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