9話 ページ10
由衣さんは少し離れた広場にいた。
由衣さんを見つけられて少し安心して、由衣さんが腰かけている椅子に私も座った。
『龍我から聞きました。由衣さんも人体実験を受けたんですね』
「あの時あいつが助けてくれたら私や生徒達はあんな目に遭うこともなかったし、死ぬ思いもすることもなかった」
スマッシュの実験台にされていたなんて酷すぎる、その一言では表せないほど負の感情が込み上げてきた。
「あの子達は今も苦しんでる」
『由衣さん…』
「仮面ライダーが助けてくれるなんて二度と思わない」
助けられた人ばかりに目がいっていた。
みんなありがとうって言ってくれて、感謝してくれて…こうやって憎んでる人もいるんだってこと、知ろうとしてなかった。
『もう一度だけ…信じてくれませんか?龍我のこと…』
由衣さんと向かい合わせになるように立つ。
『あの時の龍我は周りが見えてなかった。自分のこと、仲間のことで手一杯で。でも今は違うから。由衣さんのこと助けてくれる。絶対』
一礼をして私は工場に戻った。
これで変わってくれるとは思わない。
けれど少しでも力になれたのなら、私は本望だ。
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作者名:Non | 作成日時:2020年8月8日 18時