４章ー１３ ページ50
へらりと笑うコネシマさんに、小さく頷いてからわたしは間合いを取った。息を吐きながら両手で握った木剣に意識を集中させると、鍛錬を続ける男達の声が随分と遠くに聞こえた。向かいに立つコネシマさんは片手で剣を握り、じっとこちらを見据えている。流石に幹部というだけあって隙はないが、いつまでも睨み合っている訳にもいかない。わたしはぐっと手に力を込めると、勢いよく地を蹴った。
カン、と木剣同士がぶつかり合う高く無機質な音が響く。左腕は痛まない。いとも簡単に受け止めたコネシマさんだったが、驚いたようにその目を見開いていた。それから目を細めて僅かに口角を上げた彼は、思い切り剣を押し返してきた。わたしはそれに逆らわず一旦身を引いて、光が差した海面のように煌めく水色を見つめた。
「もしかして結構やるんちゃうん？」
「どうでしょうか」
獲物を見つけたと言わんばかりに舌舐めずりをするコネシマさん。焚きつけたのは早計だったかとドキリとするが、舐められっぱなしでいるよりかはよっぽど良い。
そこからは、会話もなくただ無我夢中で彼と剣を交えるだけだった。時間にして十分にも満たないほどだろうが、その時間はとてつもなく長く感じられた。彼の一太刀はとにかく重く、受け止めるのがやっと。だがその分隙も大きく、防戦に徹さなければならないという事もなかった。どれほど手を抜いてくれているのかは分からないが、戦況は五分五分といったところだろうか。少なくとも同じ獲物を使っているということもあってゾムさんよりもやりやすいのは確かだった。周囲の訝しげな視線もいつの間にか熱い声援に変わっている。どういう訳か上司であるコネシマさんよりも正体不明のわたしのほうを応援しているらしかった。それがなんともおかしかったが、笑っていられる余裕はない。だが周囲の声に自分自身が鼓舞されているのは間違いなかった。
ブランクのせいか体力の減りが著しく、こめかみには汗が流れる。対してコネシマさんには比較的まだ余裕が伺えた。持久戦に持ち込まれたら厄介だが、彼の方もそれを分かっているのかそう簡単に勝負を仕掛けるタイミングを掴ませてはくれない。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
