４章ー１２ ページ49
「なんや、気になるんか？」
「――え、ああ、そうですね。少し」
どうやら熱心に眺めていたことを気付かれていたらしい。投げかけられた問いに、わたしは隠す必要も無いと素直に頷く。するとコネシマさんは少し悩むような素振りを見せてから、「やってくか？」と提案した。わたしはきょとんとして彼を見つめた後咄嗟に「いえ」と否定したものの、正直その言葉には迷いがあった。
自分のことを誰も知らない場所で、背負うものも何も無いただのわたしという人間として剣を振るうことが出来る。幹部である彼ならば怪我をさせてしまう心配をする必要はないだろう。提案自体はとても魅力的なものだった。ただ、残念ながらわたしはここに剣を振るうために来た訳では無い。なによりゾムさんとの約束があるのだから、油を売っている暇はないのだ。だが、後に続けられた彼の言葉によってわたしの心は大いに揺るがされた。
「はは、そんなやりたいって顔して言われても説得力ないで。ゾムは今ちょっとトラブル対応中やから今行ってもどうせしばらく待たされるし。気にせんで俺と一本だけ打ってこや、な？」
トラブル対応中。その言葉を信じるならば、コネシマさんの提案を断る理由はないのかもしれない。うじうじと決めあぐねていると、またしても彼は私の肩を押し、鍛錬場の中へと誘った。どうも彼のペースに乗せられっぱなしである。
「すまんお前ら、二本貸してもらえるか」
コネシマさんは傍に居た男に声を掛け、鍛錬用の木剣を二つ受け取った。内ひとつをこちらに投げて寄こす。わたしは落とす訳にもいかず、真剣よりも随分と軽いそれを胸に抱えた。
こちらの存在に気が付いた男たちはその手を止め、伺うような視線をこちらに向ける。得体の知れない女がコネシマさんと一戦交えるだなんて大丈夫なのだろうか、とそんな声が聞こえたような気がした。誰も口を出すことはないが、見下されている。そう感じたわたしは、木剣を抱える力を僅かに込めた。勝てるとは思っていないが、舐められるのは癪だというプライドがわたしを躍起にさせている。
「ちょっとは出来るんやろ？怪我はせんようにしたるから、思い切りやってええよ。我流やから型とかそんなんないけど構へんな？」
「･･･ええ、少しだけお相手お願いします」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
