３章−２０ ページ28
「無理な頼みであることは承知の上ですが、案内をお願いできないでしょうか」
「はい、勿論です」
ひとらんらん様の頼みであれば喜んでお受けしましょう。そう続ければ彼は安堵し、それから困ったように笑った。オスマン様は一瞬こちらに目を向け、またなんでもないふうにティーカップに口付けている。口を挟む様子はない。先の言葉は本音ではあるが、同時に彼への当てつけでもあるため、僅かながらではあるが反応を示した事にわたしは笑みを深くした。こちらだってやられっぱなしは気に食わないのだ。
◇◇◇
そちらが呼び付けたくせに、さあ外交の邪魔だと言わんばかりに来客室から追い払われた私たちは、その足でそのまま馬屋へと向かった。それは、他でもないひとらんらん様の希望だった。先日のパーティーで彼が農産業に携わっていることは聞いていたが、特に酪農に関心を持っているーーというより動物と触れ合うことが好きなのだという。
馬屋までの道のりは、ゆったりと木陰を歩きながら、ひとらんらん様の話に耳を傾けた。彼が愛情を注いで育てている"外道丸"という愛馬のこと。野菜を食べてくれない同僚に手を焼いていること。そんな他愛の無い話に花を咲かせながら、喧嘩っ早く暴力的な我々国のイメージとはかけ離れた彼の人物像を純粋に好ましいと感じた。
馬屋に到着した後、ひとらんらん様はすぐさま馬に寄り、体のあちこちをぺたぺたと触診するように触れた。いくら人慣れしているとはいえ怪我でもしたらと心配したものの、されるがままの様子に心配は杞憂に終わりそうだと胸を撫で下ろす。「健康に育ってる。いい馬だ」と表情を緩ませる彼に、私もつられて笑みを浮かべた。
馬と触れ合ったり、たまに管理人と会話をしている彼の様子を、干し草の俵に腰を下ろしながら眺める。時折寄ってきた馬の顔を撫でてやりながら、この後はどこを案内しようかと思案していると、不意にひとらんらん様が振り返った。
「そう言えば、"私も"仕事の話をしに来たわけではないので、よければ気を楽にしてもらえませんか」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
