３章−１９ ページ27
オスマン様の発言に、わたしはどうしたものかと瞳を彷徨わせる。何食わぬ顔で紅茶をすする様子に舌打ちをしたくなる衝動を堪え、小さく息を吐いた。下手に言い訳して不審がらせるよりかは、二つ返事で了承して話題を早急に流してしまう方が良いのかもしれない。「では、そのように」と小さく絞り出せば、彼はたいそう満足気に口角を持ち上げる。後々面倒臭い事になるような予感もするが、咄嗟に言葉が出てこない以上致し方ない。
「有難うございます。きっと頷いて下さると思っていました」
「いえ、貴方のような方にそう言って頂けるとは、至極光栄です」
「とんでもありません」
御誂え向きの言葉を並べながら、ちらりと外交官に目をやる。これ以上無駄話で彼らの時間を奪う訳にはいかない。それに、長居して我々国との関係を追及されても困る。ばちりと目が合った外交官は僅かに頷く様な動作をした。こちらが退室したいという意思はどうやら汲み取ってくれたようだった。
「では、この辺りで失礼します。外交が終わった頃に改めてお伺いします。要望があればご案内いたしますので」
「ーーああ、お待ちください」
深々と頭を下げ、わたしはソファから腰を持ち上げようとした。ようやく退室できる。そう思った矢先、何かを思い出したように口を開いたオスマン様によって、わたしは再度柔らかい生地に体を沈めざるを得なかった。思わず頬をひくりと引き攣らせながら、「いかがなさいましたか」と目を細める。
「ひとらんらんに城内を案内していただけませんか？」
「……」
「彼は外交の為に来た訳ではないので、きっと退屈でしょうから」
「……オスマン」
すっかり傍観に徹していたひとらんらん樣も、彼の提案に眉を顰めた。対して、窘めるように名前を呼ばれたオスマン様だが、わざとらしく「ん？」と首を傾げて見せるのみ。その態度に、ひとらんらん様は呆れたようにため息をついた。どうやら彼も苦労しているらしい。それからひとらんらん様は綺麗に伸びた姿勢はそのままに、体ごとこちらに向ける。真っ直ぐな黒い瞳には気遣わしげな色を乗せていた。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
