２章ー１８ 我々国デート？ ページ39
所は我々国のとあるケーキ屋。
目の前には、真っ白な生クリームの上にちょこんと熟れた苺が乗せられた可愛らしいショートケーキとアンティーク調のカップが並んでいる。下手に触ると崩れてしまいそうなふわふわな生地を慎重にフォークで切り取って口へ運べば、とろけるような甘さが広がる。それでいてくどすぎず、次へ次へと手が伸びる。思わず頬が緩んでしまうような極上のスイーツを存分に味わっていると、向かいの席に肘をついて座るシャオロンさんはこちらの様子を眺めながら笑った。
「美味しそうに食べるなあ」
「本当に美味しいの。この辺りじゃ有名なお店なの？」
「らしいわ。俺はあんまり来うへんねんけど、うちの甘いもん好きな奴が贔屓しとってな」
シャオロンは紅茶を一口飲む。折角のケーキ屋だというのに彼の前にケーキはなく、カップがひとつ置かれているだけ。見た目は可愛らしいのだから、スイーツが良く似合いそうなのに。だが確かにすらっとした細身の彼は、あまり余分な食事はしていなさそうだ。
「シャオロンさんはあんまり食べないんだ」
「Aちゃんが食べてるとこ見てるだけでお腹いっぱいやわ」
「ええ、美味しいのに。見た目もかわいいし、苺もすごく甘いし」
そう言ってまた一口。
パティシエの腕が良いのは勿論だけれど、素材もとてもいいものを使っているに違いない。普通に市販されているものよりもうんと甘い苺は、出されればいくつでも食べてしまいそうなほどみずみずしくて美味しい。
するとシャオロンさんは「言うといたるわ」と自慢げな表情を見せた。
「え？」
「うちに農業やっとるやつがおんねん、ここで使ってる果物はほとんどうちで作ってるもんやからな。多分クリームもそうちゃうか」
「すごい、そんなことまでしてるんだ」
わたしはシャオロンさんの説明に感嘆の声を漏らした。
国が違えばやっていることも全然違う。リドラにも農産業に関する取り決めを扱う機関は存在しているけれど、実際に現場に赴いたり土を触っている人間が果たしていただろうか。少し我々国民が羨ましい、なんて。
もぐもぐと咀嚼していると、シャオロンがじっとこちらを見つめる。わたしは口を開くことが出来ないので、目をぱちくりとさせて首を傾げた。
「やっぱり一口もろていい？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 426人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aaaa(プロフ) - 遊麻さん» そうなんですね！焦らず、ゆっくり更新でいいので素敵な文章待ってます！ (2019年3月14日 16時) (
レス) id: 13526f236d (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - aaaaさん» こんにちは、コメントありがとうございます。執筆再開にあたって現在過去の文章を修正しているところでございます。応援とても励みになります。一刻も早く続きを執筆できるよう頑張りますのでよろしく願いいたします。 (2019年3月14日 9時) (レス) id: 196a2627e3 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - コメント失礼します。通知が来て、更新は停止しておりますが、戻ってくるの待ってます。続きがすごい楽しみです。これからも頑張ってください！ (2019年3月13日 11時) (レス) id: 81c6a91539 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - 氷弥さん» 初めまして。ご指摘ありがとうございます。今の今まで気付かなかったのもお恥ずかしい話なのですが、完全に誤字ですね。修正させていただきます。これからもよろしくお願い致します！ (2018年10月31日 2時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
氷弥(プロフ) - はじめまして！楽しく拝読させて頂いております！質問なのですが、1章-2の諺は意図的に言い方を変えているのですか？少し気になって質問してしまいました！意図的でしたら読解力不足で申し訳ないです (2018年10月10日 7時) (レス) id: 11d3565659 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遊麻 | 作成日時：2017年11月15日 14時
