不釣愛 [藤原愁] (ページ41)

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第三十八話　姉の姿ページ41

お姉様の部屋は、あの日から殆ど変わらず残してある。
偶に埃が溜まらないよう掃除をする程度で、姉の痕跡を消したくないからそのままになっている。

母「どうして花梨の部屋に来ようと思ったの？」

『…日記を見たくて』

生前、姉は日記をつけていた。
私が良く遊びに誘うと、勉強している姉の姿をよく見ていた。しかし、ある時それが勉強ではないことに気がついた。参考書も何もなく、手帳だけが机の上に置いてあったからだ。

母「日記？！」

『どうかされました？』

母は驚いたというより、焦ったような表情をした。
何かを隠していたのか？

母「…まさか日記の事、知っていたの？」

『えぇ。でも、読みたいとは思っていませんでした』

母「じゃあどうして今になって…」

『…お姉様と同じ年齢になって、不安になることが増えました。姉の背中を見失い、何もない虚空を彷徨うかのような感覚に陥ることが…ですから、知りたいと思ったのです。姉の事を』

母「・・・丁度、今夜あなたに大事な話をしようと思っていたの。日記なら机の引き出しにあるわ。読み終わったらリビングへ来て頂戴」

そう言って母は、鍵を渡して部屋を後にした。

『はい』

机にはいくつかの引き出しがある。その中で、鍵のかかった引き出しは一つしかない。
鍵を開け、引き出しから革製のカバーのかかった分厚い手帳を取り出す。

表紙を開き、姉の字で最初に書いてあったのは＿＿＿＿＿＿

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿No Title.

ページをめくる。

「これは内容や日付はバラバラに、書きたいと思った時に、書きたい内容を書くもの。故に、No Title」

ページをめくっていくと、学校での出来事や私とのやり取りなどが書かれていた。日付も内容もバラバラで、時にはテストの振り返り、時には友人関係や恋愛の悩みなどがあった。

小学生の姉も好きな人がいたり、友人関係に悩んでいたことも知って、少しだけ親近感が湧いた。
中学校に入ってからは茶道部と華道部を兼部し、多くのコンクールや展示会で受賞したことも書かれている。