第三十五話 廻る考え ページ38
愁side
帰宅後、俺は早々に自室へ行き、道着を脱いで部屋着に着替えた。
静弥には中学の時から何かと邪魔をされたものだ。邪魔というのは些か酷い表現ではあるが、実際にそうなのだから仕方がない。
湊の弓の事も、Aの事も。静弥は首を突っ込んで来る。
＿＿＿＿＿＿ある可能性が頭に浮かんだ。
中学2年の冬。Aは静弥に告白された。既にAは静弥に恋愛感情を抱いていて、婚約しているから付き合えないと相談していた可能性だ。
もしそうなのだとしたら、俺はAを不幸にしていることになる。
コンコン
愁「…どうぞ」
東条「夕食の準備が整いました」
愁「わかった。直ぐに行くよ」
リビングへ向かうと、Aと沙絵、東条さんが待っていた
沙絵「A姉様、詳しく教えてください！」
『興味ある？嬉しいな〜。でも愁も来たことだし、夕食をいただいてからね』
沙絵「はい！」
愁「遅れてすまない。…いただきます」
A/沙絵『「いただきます」』
Aは凄い。どうして沙絵と自然に話せるのか、俺には判らない。俺が距離を置きすぎているのかもしれないが…。
愁「さっきは何の話をしていたんだい？」
沙絵「兄さまは、片手で31まで数える方法はご存知ですか？」
愁「…二進法の事かい？」
二進法とは、０と１の2個の数字のみで数を表記する方法だ。普段俺たちが使っているのは十進法で、０から９までの10個の数字で表記する。十進法の「２」は二進法で「１０」と表される。コンピューターはこの二進法を用いて情報を整理しているらしい。
沙絵「はい！その数え方をA姉様に教わっていたんです！」
『私が数学にハマったきっかけだからね〜』
愁「それは初耳だ」
それから三人で他愛もない話をした。弓道の話は沙絵としたくないとAに言っているから、大会の話はしなかった。
『愁…体調、悪いの？』
愁「え？」
『少し疲れているみたい…今日は速く寝た方が良さそうだね。私も流石に疲れたから、今日はよく眠れそうだよ〜』
愁「…そう、だね」
そんなに顔に出ていたのか？そんな心算は無かったが…Aが言うならそうなのだろう
東条「皆さま、お風呂の準備が整いました」
愁「俺は後で入るよ」
『沙絵ちゃん、先に行っておいで。私ももう少しゆっくりしたいから』
沙絵「わかりました。では、先に入りますね」
愁「…A、少し良いかな」
『…？』
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年3月21日 22時
