第十三話 熱帯びる手 ページ15
愁side
まさかこんなにも早く事が大きく進んでしまうとは思いもしなかった。
両家の両親は良かれと思って言っていることは理解できた。しかし、最後のAの笑顔…あれは笑顔と呼べるのか?まるで自分の気持ちを悟らせんとばかりの表情だった。
愁「…やはり心配だ」
Aの様子を見ようと部屋を出た時、Aが自室のドアの前で蹲っていた。
愁「・・・A!?」
『しゅ・・・う・・・』
Aを抱えて俺の部屋へ行き、ベッドへ寝かせる。少し火照っているから逆上せたのだろう。一旦水分補給をさせないと…
愁「A、水飲めるかい?」
『・・・いらない』
愁「では、枕元に置いておくよ」
『・・・愁の手、冷たい』
愁「!…それはAが熱いだけだ。少しの間貸すから、落ち着いたら水分を取ること。いいかい?」
Aがコクリと頷く。
体調を崩しにくいAが逆上せるなんて…一体どれほど長い間湯船に浸かっていたのだろうか?
Aは暫くの間俺の手を頬にあてて顔の熱を逃がしていた。しかし、俺の方が熱が上がりそうだった。流石の俺も、湯上りの火照ったAを直視はできなかった。
ふと、俺の手を握る力が強くなった。
愁「…?」
『…ごめんね、迷惑かけて。もう大丈夫』
そう言って起き上がって水を飲む。
愁「A・・・何か考え事でもあったのかい?」
『_______っ!』
バタンッ!
勢いよく部屋を出て行ってしまった。
Aの体温が移った自らの手を見る。そこには_______
愁「______________涙…?」
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作者名:i | 作成日時:2023年3月21日 22時