第十二話 廻る思い ページ14
食事会が終わり、今日から藤原家でお世話になることになった。正直まだ気持ちの整理ができていないが、取り敢えずお風呂をいただくことにした。
(…どうしてこうなったんだろう)
私は小学六年の頃から愁のことが好きだった。それを自覚して直ぐに、両親から愁との婚約が決定したと言われた。一カ月あっただろうか…。
でもその決定に反対しないのは、心のどこかで喜んでいる自分がいるからだ。好きな人と同じ学校に通い、こうして屋根の下で生活することができるのだ。普通の家より広いとはいえ、朝起きて学校へ行き、弓道部での活動を終えて帰宅する。入浴して上がっても、自室の戻るまではずっと愁がいる。
愁は私の事、どう思っているんだろうか。私の事もただの許婚としか見ていない。優しくしてくれるのも、只の付き合い。そこに好意は無いのだろう。愁のことだ、抑も恋愛という概念が無いのかもしれない。
(_______でももし、愁に好きな人がいたら、私は愁を苦しめているのかもしれない。それに、弓道一筋の愁にとって私との婚約が煩わしいと思うものなら…)
(駄目だ…考えすぎる悪い癖が出てる)
私は昔から考え出すときりがなく、しかも悪い方向へと考えを巡らせることが多い。其の所為で心が疲れることも少なくない。愁と比べられ、良家であるが故のプライドが私の心を蝕んでいくのだ。
お風呂から上がり、長い廊下を渡って自室へ向かう。ドアを開けようとしたその時
『・・・あ、れ?』
視界が歪んだ。頭が真っ白になり、全身から力が抜けていく_______
ガチャッ
愁「・・・A!?」
『しゅ・・・う・・・』
150人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:i | 作成日時:2023年3月21日 22時