SOS ページ32
桃side
家へ向かっている途中で目を覚ましただいきくん。
赤「あ、のんちゃ……」
桃「ん?」
俺の姿を捉えるなり、バツが悪そうに目を逸らした。
赤「ごめん、なさい…」
桃「何がごめんなん?」
赤「あきと、に、わがまま言うてもうたっ、」
話は聞いている。
家に帰りたいと駄々を捏ねていたとか。
それでもまだ初日。それにこんなの我儘のうちに入らんし。
桃「謝ることなんか何にもないで、大丈夫やからな?」
赤「うん…」
悲しそうな顔が明るくなることは無く、家に着いた。
鍵を開けた瞬間に 降ろして と言われて。
従えば洗面所へ駆け込み、水を出す音。
だいきくんの中ではこれが一つの習慣になっているんやな。
普通やったらその後は俺のところに来るんやけど、
今日違う。一人でリビングへ。
桃「だいきくん、どうしたん?」
赤「…………なんもない」
桃「うーん、」
いつも元気なだいきくんが、
今日はソファに座って俯いていて、何も無い訳がない。
勇気のない俺は深掘りすることが出来ひんくて。
おやつに買っておいたプリンを出せば、
一口、二口食べて もう要らない と返されてしまった。
録画しておいたヒーローアニメをつけてみるも、
ボーッと画面を眺めて、見ているのかすら分からん状態。
桃「はぁ、どないしよ…」
これ以上刺激してもあかんと思いソファから離れ、
だいきくんの食べかけのプリンを一口食べた。
赤「ね、…のんちゃ、」
桃「んー?」
いつの間にか傍に来ていただいきくん。
俺を見たまま何も話さへんから
口元にスプーンで掬ったプリンを持っていけば、
素直に口が開き、プリンが吸い込まれた。
赤「おいし、」
桃「ふふ、美味しいやろ?何せ市販やからな」
赤「………?」
頭にハテナが浮かんでいるだいきくんの顔、
ちょっと抜けてて可愛い。
食べる? とプリンを差し出せば頷いたから、
俺の向かいに座らせた。
赤「のんちゃ…あの……」
桃「どうしたん?」
赤「あした、、おしごと…?」
仕事…やけど。
今度こそ、目の奥に不安を抱えてるのを見逃さなかった。
だいきくんのSOSに気付いたんや。
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作者名:ヨン | 作成日時:2021年12月16日 14時