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「……星海くんは強いね。」
進行方向を見ているだけのはずの瞳が、やけに遠い先を見ているように見えた。それくらいに、月と街灯の明かりに淡くて照らされている目の前の彼女は綺麗だった。
まだ俺が幼かった頃、俺が強いに一番近いって言った母さんがみせたあの笑みを思い出す。好きな人の笑みが母親に重なるなんて、そんなマザコンになった覚えもないけども。つまりはどちらも俺にとって印象的だったってことだ。
あんまりにその顔が綺麗で、終わらせるには惜しくて。何も言葉を返せないままにいた俺に、不安そうな表情になった彼女がこちらを向いた。「星海くん?」と眉を寄せた顔で呟かれて心臓が跳ねる。
「……俺は弱い。小さいっつーのはそういうことだ。」
俺の言葉に「そんなこと……。」と口を開いた(人1)さん。迷うこともなくこんなにも一瞬で否定してくれるんだなって、相変わらずの優しさがやっぱり暖かい。俺はそんな彼女の言葉を遮って「でも!」と声を張った。
「(人1)さんがそう言ってくれるなら、俺はもっと強くなる。自分で自分を強いって胸はれるくらいな!」
君がくれた優しい言葉を嘘にしないために。俺がいつか自分のことを強いと言える日がくるように俺が頑張るんだ。
(人1)さんは丸い目を揺らして、大きく見開いた。それも一瞬で、すぐにその目を細め、口角を緩めて笑う。その表情が、笑顔が、どうしようもなく可愛くて。自分がどれだけ彼女を好きか思い知らされた気分だ。
そんな俺達の隣を、何やら急いだ様子のサラリーマンが通り過ぎて行った。俺も(人1)さんもそれに気づいて、時計を見た彼女が「あ!」と声を上げる。
「星海くん、電車!あと3分!」
「なっ!?」
慌てた様子の彼女が声を上げた。だからさっきのサラリーマンがあれだけ焦っていたのかと気づく。
「ここからなら走れば間に合うかな……。」と不安そうな彼女。夜道は危ないし、なるべく早く帰らせてあげないといけない。俺は少し葛藤してから、勢いに任せて彼女の手をとった。
「行こうぜ!」
「え、あの、星海くん……!」
(人1)さんの戸惑いの声が聞こえて、ちょっと強引すぎたかと反省する。それでもあんな告白したんだ、アプローチはしないよりましだよな…………多分。
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赤兎リエ輔(プロフ) - 檸檬さん» レス遅れちゃってすみません…!初々しさを目指しているので、そう感じていただけているようでとても嬉しいです…!初々しさ全開で頑張ります笑 コメントありがとうございます、これからもよろしくお願い致します〜! (2020年3月30日 21時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - 初々しいの好きです!!!!!!!!!!!! (2020年3月20日 19時) (レス) id: bb7087dd1f (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - なつなつきさん» 謝らないでください〜コメントとってもありがたいです涙 私としてはにやけながら楽しんでいただけているようで嬉しい限りです…! これからもっとにやにやさせられるよう頑張りますので電車での閲覧ご注意くださいっ笑 (2020年3月17日 21時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - lonkuuさん» その甘酸っぱさを目指しているのでそのお言葉が嬉しいです…!!楽しんでいただけているようで何よりです…涙 お褒めの言葉、応援の言葉ありがとうございます。もっと好きになってもらえるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2020年3月17日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
なつなつき(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» またコメントすみません!電車で読むの間違えたぁぁっ。となってます。にやにやが止まりません! (2020年3月17日 11時) (レス) id: 0034c747bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2020年1月19日 1時