第207話 ページ7
・
・
「どうした狂犬?チビッ子相手に随分とお熱じゃねーの。」
ラケットをコートに打ちつけ苛立ちを見せるドルギアス。そんな彼に、跡部はそう言い放った。
その言葉にカッとしたらしく、ドルギアスがそのラケットを跡部に向かって投げようと腕を振り上げる。けれど動じない跡部と彼が数秒にらみ合った後、「止めてくれドルギアス!」とオーストラリアの主将、ジャンが声を上げた。
「オーストラリアを失格で終わらせる気か!?」
ドルギアスは腕を下ろし、舌打ちをして背を向けるとサーブのためにエンドラインへ歩き出す。
「ドルギアス!!このオーストラリアの恥さらしがぁー!!」
「ふざけるな、好き勝手言ってこのザマかよ!!」
「チームの仲間を散々雑魚扱いしやがって!」
「雑魚はテメェだ、オーストラリアの恥!!」
スポーツマンとは思えないドルギアスの行動は観客の怒りを煽った。自国で開催され、その代表である選手があわや暴力行為となれば怒りを受けるのは仕方が無いだろう。
巻き起こるブーイングの中、ドルギアスはただガムシャラにプレーを続けた。会場の声なんてまるで聞こえていないかのような図太い精神力を見せ、ついには1ゲームを取り返す。その姿に会場は少しずつ怒りの熱を失い始めた。
ベンチに戻ってきた彼に、チームメイトのクリスはそっと歩み寄る。ドリンクを差し出して、はっきりと彼は言った。
「俺は今でもお前が大嫌いだ。……だが……頑張れ!!」
続いてミルキーもマックも声援を送り、ドルギアスが自分に繋ぐと信じてアップに行く者も現れる。チームメイト、そしてドルギアス自身の姿に、一度は牙をむいた観客すらも変わった。
「……おめでたい奴らだ。」
「頑張れーっ!ドルギアス!!」
会場もチームも、オーストラリアという国がすべてひとつになった。飲まれてしまっても可笑しくないこの状況でも、遠山は悠然としている。
鬼さんが気に入るわけだ、なんてAは笑って心の中で声援を送る。そしてラストゲームになり得るラリーが始まった。
遠山の打ったサーブに、ドルギアスは剛速球のスマッシュを叩き込む。天衣無縫の遠山にすら反応を許さなかったそのスマッシュ。けれど、遠山はそれに怖気づくような選手ではない。
お返しをするように今度はドルギアスの逆を突いて遠山がボールを叩き付けた。
6-5の15-15。日本の勝利まではあと3球だ。
・
・
472人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗菜 - アニメがまた、スタートするのでこちらも更新されるのをお待ちしています。 (2月15日 19時) (レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - 続きが楽しみです (2021年9月22日 0時) (レス) id: 09253d858e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 素晴らしい作品!夢主ちゃん格好可愛いすぎます! (2021年1月3日 15時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
巫和泉(プロフ) - コメント失礼します!読んでいて,とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年1月4日 18時) (レス) id: c314aa38cf (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 更新待ってます!続きが楽しみです。 (2019年11月7日 8時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年3月18日 0時