第228話 ページ28
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「白石蔵ノ介!出番じゃ〜!」
「……はい。」
覚悟を決めたような表情でコートに出た白石だったが、彼は他3人のようにポーズは見せなかった。それに対するブーイングが観客から巻き起こり、Aの顔に苦笑いが浮かぶ。
『ザ・ベストオブ3セットマッチ!フランスサービスプレイ!』
審判のコールがかかって、正式に試合が始まった。フランスのイケメン、トリスタンがサーブに構える。対して日本は少し特殊なダブルスフォーメーションをとっていた。左利きの白石がデュースサイドを守っているのだ。
何かフランスの意表をつくつもりなのだろうか。あまり勘がいい方ではないAにはパッとは思いつかない。
「意表をつくつもりなら……俺達には効かないぜ!」
その言葉と同時にトリスタンがサーブを放った。今回の白石の配置の場合、セオリーといえるのは外へ逃げるスライスサーブ。まさしくそのサーブを打った相手に対し、白石はそれを読んで素早くフォアに回り込んだ。
「さあ、どっちが有効打かな。」
「ストレート……嫌……何あれ……。」
Aは相手の動きを見てそれを欺くように逆サイドに打つプレーを得意とする。その分動きを見定めるのは得意なはずだが、彼――パリコレの動きは違った。これまで見たことのない異様な、規格外の読み辛い動きだ。今だってフェイクにさらにフェイクを重ねていた。
白石のショットが打ち返され、パリコレが華麗にポーズを決める。それに引っ張られて歓声があがった。
「さあ、ポージング対決の始まりだ!」
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君島のスマッシュに見せかけたボレーがコートの奥深くに落ちる。「ゲーム日本!1-1!」というコールと同時に君島はポーズを決めた。
両者譲らない激しい攻防。君島とパリコレ、テクニックを持つもの同士のラリーは観客を圧倒し、点が決まるたびに魅せられるポーズもまた多いに観客を盛り上げた。トリスタンのスマッシュで3-1、日本は2ゲームの差をつけられた状態。
トリスタンのスマッシュが決まったことによ観客は彼がどんなポーズを見せてくれるかと期待する。座り込みラケットを抱えたトリスタンに、会場は黄色い声で埋まった。
「……これ、テニスですか?」
「うん、まあ……恐らく。」
入江と苦笑いしあい、隣で徳川も眉をひそめている。ポージング対決はまだまだ続き、遂に試合は5-2、日本は1セットを落とす瀬戸際まで来ていた。
……ただ、コート上で未だポーズを決められない男がひとり。
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紗菜 - アニメがまた、スタートするのでこちらも更新されるのをお待ちしています。 (2月15日 19時) (レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - 続きが楽しみです (2021年9月22日 0時) (レス) id: 09253d858e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 素晴らしい作品!夢主ちゃん格好可愛いすぎます! (2021年1月3日 15時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
巫和泉(プロフ) - コメント失礼します!読んでいて,とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年1月4日 18時) (レス) id: c314aa38cf (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 更新待ってます!続きが楽しみです。 (2019年11月7日 8時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年3月18日 0時