第220話 ページ20
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フランスの試合を前に、Aは絶句していた。開いた口がふさがらない、それほどまでにフランスの実力は高く、世界ランク7位のイングランドを圧倒していた。
実力だけでなく、その面々も個性豊かだ。特に今試合をしているダブルス1の選手たち。
「彼は通称パリコレ……ショットが決まると必ずポーズを決める。」
乾の声が聞こえてきて、Aはほぇー、と思わず言葉をこぼした。その言葉が驚きか、関心か、或いはそれ以外の感情を含んでいるのかは自分でも分からない。
「その隣にはすげーイケメンがいるっスよ!?」と切原が叫んだ。彼の言うとおり、パリコレとダブルスを組んでいるのは端整な顔立ちをした男だ。
「なんでも彼はイケメンすぎてフランステニス界を追放されかけたらしい。」
「えぇっ〜!?」
またも聞こえてきた乾の言葉に驚きのあまり目を見開く。その言葉を照明するように、彼のショットが決まって「Paf☆」とポーズを決めれば会場を覆いつくすほどの甲高い歓声が沸き起こった。見れば同じ柄のTシャツを着た女性が会場を埋め尽くしており、その量にAは苦笑いする。
「世界は広すぎやね、月光さん、A……。」
「お、恐ろしいですね……。」
「さして興味はない。」
もちろんビジュアルだけでなく技術も伴っており、ストレートでの勝利を納めた。これで既にフランスは2試合をとっているため、のこるシングルス3で勝敗が決することになる。
ベンチから出てきた人物にAは肩を揺らした。金髪の髪を揺らし、心底愛おしそうにラケットを抱えている男はカミュ。ラケットを愛しているという不思議な男だ。
何を思ったかカミュはコートへは向かわず、壁にラケットを立てかけた。それから軽く髪をいじった後、ラケットを立てかけている壁に手をつく、所謂壁ドンだ。その異様で理解不能な光景にAは目を細めた。何をしているのだとでも言いたげに。
「おい、ラケットに壁ドンしてんじゃねーか!?」
「ラケドンやでぇ〜っ!?」
それからラケットをもってコートへ向かいながら、カミュはラケットにそっと囁く。
「さあ、一緒に行ってくれるかい。mon amour?」
そういった彼と、僅かに目があった気がした。どきりと肩を跳ねさせると、フッと笑った彼は高々とラケットを掲げる。
「テニスを愛し、テニスに愛されし革命児――フランス代表主将、L・カミュ・ド・シャルパンティエ。」
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紗菜 - アニメがまた、スタートするのでこちらも更新されるのをお待ちしています。 (2月15日 19時) (レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - 続きが楽しみです (2021年9月22日 0時) (レス) id: 09253d858e (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 素晴らしい作品!夢主ちゃん格好可愛いすぎます! (2021年1月3日 15時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
巫和泉(プロフ) - コメント失礼します!読んでいて,とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年1月4日 18時) (レス) id: c314aa38cf (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - 更新待ってます!続きが楽しみです。 (2019年11月7日 8時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年3月18日 0時