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「あら、リュウがねぇ……少なくとも休憩時間前に時計を気にするようにはなっているけど、不満とかはなさそうですよ」
私が来る時間を気にしているのかしら、楽しみとかそういう感情が少しでもあれば良いのだけれど……高望みしすぎか。
「リュウは今どこに？」
「外の薬草畑に行ってますよ、顔を見せるくらいなら平気ですが」
「そう……ではお言葉に甘えさせていただきますわ」
「はい、リュウも同い年の話し相手ができて、こちらとしては嬉しいばかりです。歳の近い者はここにはあまりおりませんから」
確かに城内に私達ほどの年齢のものはあまりいない。
弓矢番のとかだったら若い子もいるだろうけれど、交流はない。
薬室を出て薔薇のような色をした絨毯をワルツのステップでも踏むように歩いていく。
外の空気と近いと、体もそのぶん軽くなる。
鳥になってそのまま飛び立つ準備をしているようで、私は好き。
なにせゼンお兄様と私は執務室の窓が鳥籠の檻に見える病ですから。
抜け出さないだけ私の方が軽症だけど。
「A王女」
ガレスとは違う声に後ろを振り向くと、顔見知りの菓子職人の姿があった。
身分が下の者から話しかけては行けないという話があるが、あくまでもそれは社交界での貴族同士の話。
「ごきげんよう、何かご用？」
「ええ、聖夜祭が近いので」
そう言って、彼は小箱を取りだした。
ガレスは黒手袋の大きな手で白い小さな小箱を受け取って私に差し出す。
蒼い綺麗なリボンをほどいて蓋を開けると、中には宝石のような形をしたチョコレートが入っていた。
「毎年ありがとう、ティータイムの時間でもよろしいのに」
北の城にいたとは言っても、こちらの城に来ることももちろんしばしばあった。
だからこの菓子職人はそこそこ付き合いのある人で、私も今までに何度かこうして祭事が近づく度にお菓子を貰っている。
「いえ、ティータイムのお菓子担当は私ではありませんから。それにこれは仕事ではなく気持ちです」
「そうなのね。わざわざありがとう」
礼を言うやいなや足早に去っていく菓子職人を眺める。
いつになく声色が落ち着いていないようだった。視線を一度もまったくそらさないのも意識的にしているようで少し変だった。
少しでも違うところがあると警戒してしまうのはもはや王侯貴族の癖だろう。仕方がない。
なぜあんなにも焦っているの？
少し引っかかる……。
私はそんな違和感を胸に、リュウのいるらしい薬草畑へと向かった。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
