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「随分と面白い表現をするのね、いつからここは詩人の集いになったのかしら」
目の前にいるお兄様は先ほどまで不機嫌そうに眉をひそめていたが、すでににやりと笑っている。
隠しているつもりだろうが私には丸見えだ。
こうした状況における舌戦の強さは貴族には必要だが、そこらへん兄上とお兄様は違った方向で強い。正味お兄様は私がどう返すか楽しんでいるのだろう。もっと妹を心配したらどうなのか。
目を細めて子石を投げた張本人を射すくめると……嗚呼、私に理解されるなんて思っていなかったのか。気まずそうに膝の上でこぶしを握り締めている。ばかばかしい。
水を打ったように静まり返ったこの広い空間に、今回は鶴の声だけが波紋を作る。
私に侮蔑の言葉を並べたのはシスク伯爵家の現当主。
最近新しい事業を立ち上げ、細い吊り橋をなんとか渡っている家。以前ダンスの断りをしたことがあった。あの時もマナーがなっていなかったし、もう領地にひきこもりでもしたらどうかしら。
「生憎と私の手足に糸はついていないの」
指を広げてにこりと笑って見せると、彼はハッとこちらを見上げる。私は操り人形じゃない。
ここで謝れば非を認めたことになるけれど、彼は口を開かない。
お兄様を見やると、十分だろといわんばかりに頷いた。
「話も終わりましたし、私は下がります」
目の前にいるお兄様にお辞儀をし、私は
「A、この後はどうするんだ?」
「大図書室に行く予定です」
「俺もそちらに用があってな、一緒に行こうか」
「ええ、もちろん、ご一緒させていただきます」
すでに話がまとまっていた私たちは、それぞれ仕事をしていた側近たちを引き連れて席を立った。
「姫……」「いいわ、任せなさい」
もの言いたげなガレスをひっそりと諫め、部屋を出る前に通りがかったシスク家当主へと言い放つ。
「言葉遊びがお好きなら、領地で詩人にでもなることね」
領地に帰ってその席をご子息にでも譲ったらどうかしら。そんな意味を込めてふわりとほほ笑む。
「私の責務が所詮ただのお遊戯だと言えるのなら、あなたも自身の責務を見つめ返してみてはどうか」
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時