一回目の冬 ページ5
最年少薬剤師のリュウに会いに行って良いかと聞いてからはや一週間。
会いに行けば、リュウは私のために休憩時間を費やしてくれた。
言い出したのは自分であるし、相手が王女であるから断れないということもあるだろう……それがひとつ罪悪感の種だった。
友人になれるかもしれない! だなんて喜んでいても自分は王女だ。
王族の言葉は一種の拘束となってしまう。
そのせいで交友関係を広げるには少し苦心することもある。
もちろん友人が今まで一人もいなかったわけではない。同い年の友人は唯一一人だけれど。
北にいた頃には研究者や学者とも仲をふかめた。
まだ離れて月日はそんなに経っていないけれど、懐かしい。皆とてもあたたかく優しい人達だった。
だから、リュウに対してもそう気を急くことはなくゆっくり仲良くなれればいいんだけれど……。
心を打ち明けられる人がいなくて私は気が急いているのかしら。
昼下がり、城内を特に理由もなく歩いていた私達はふとした物音に後ろを向く。
「……姉さんか」
「あら薬室長、ごきげんよう」
「ごきげんよう殿下……と我が愚弟ガレス。どうなされたんですか?」
「良い天気なので少々散歩を」
「そうですか。ですがずっと日向に立っていては日に焼けてしまいます、よろしければ薬室へどうぞ」
私はそうねと短く返事をすると、にこにことしている薬室長を不満げに見つめるガレスを引き連れて薬室へと入った。
ガラク薬室長とは北の城にいた時もよく会っていたため、お茶相手には良くなってもらう。
薬室の長椅子に腰掛け、出されたお茶に口をつける。
「貴方がしっかりしていないと殿下の初雪のごとき白肌が焼けてしまうじゃない!」
「あんたいつからそんな詩人みたいなこと言うようになったんですか」
「生まれた時からよ」
実は私の護衛と薬室長は姉弟で、昔から会う度に恒例の姉弟喧嘩をしている。ガレスが私の後ろからガラク薬室長に青筋を浮かべて睨みつけているのだろうなと思うと、笑いがこぼれそうになる。
「そういえば薬室長、最近こちらのリュウという方と仲良くさせていただいているのですが……」
「リュウ? あ、そういえば言ってましたね」
「! あ、あの、なんと……?」
「王女殿下がいらした、これからたまに顔を出しに来るかもしれない__と」
「そ、そうですか」
「その、正直なところ煙たがられたり王女だからと無理をさせていないか心配で……」
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時