10時間後安定。 ページ24
視界に琥珀色の光が差し込む。
私は鬱陶しいなぁ、と目を瞑った。
何をしていたんだっけ。
寝る前のことを思い出そうと再度目をあけると、視界に天蓋の夜空が広がった。
綺麗な空模様、描いた職人は一流ね。
そんなことをぼんやりと考えて横を見れば、頭痛と共に現れたのは花緑青の瞳。
「……A王女、具合はどうですか？」
その面影に、言いようのない感覚が湧き上がってくる。
なにかがずれているような、ピアノの調律が合わなくて不協和音を鳴らしているような感覚。
違う、なにかがおかしいのよ。
こんな時に思い出すのは、思い出の中の同じ花緑青の瞳。
気づくはずのものに気づいていないようなひっかかりを感じる。
「大丈夫……だと思います」
寝起きの掠れ声でなんとか伝えると、思わず首に手を当てる。
なにか嫌なことを忘れている。
なにか悪夢を、見ていた気がするのに……思い出せない。
体は問題なく動くし息も苦しくない。
……そう、息が……？
私、苦しかったの？
毒薬のせいだろうけれど、これもまた少し引っかかる。
「……眠っている時、うなされてました」
「うな、されて？ でも、なにも……」
無かった。
そう言うのにはためらいが生じた。
良いものではなかったが、確実に何かを体験した覚えだけが残っている。
体中に汗が伝っているし、心臓の動悸も激しい。
目を閉じると、琥珀色が瞬く。
どこか深緑……そう、森みたいな場所にいた。
あれはきっと、
「悪夢を見たの……」
「悪夢……内容は？」
「まったく覚えてないわ……」
痛み、苦しさ。
覚えていなくても、それは確実に体験したものであり、確かな毒薬の作用だった。
「リュウ」
「？ なんですか」
「いるわよね……ここに」
リュウの手、氷のように冷たい。
私の手の方が暖かいわ。
私の熱が、冷えきったリュウの手を溶かすようにじんわりと広がっていく。
手を離すと、目を見開いたリュウがペンを何度か持ち替えていた。
「ごめんなさい……少し不安で」
「……大丈夫です」
また出てしまった、不安定な感情。
私はそばにいる侍女にお茶を差し出され、そのお茶を口に含んだ。
熱くて、でも心地よくて、甘い香りが私の心をくすぐる。
「お疲れ様……ありがとう」
「A王女も、お疲れ様です」
あの悪夢が、思い出さなければならないものだとは思わない。
それでも胸に引っかかる。
今更私の胸に何が残っているというの……？
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
