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私の目の前には温かい湯気をたち登らせた朝食が用意されている。
前の席には護衛のガレス。
私やゼンお兄様は食卓を側近と囲むことが多い。
一番上の兄上は会食以外ではしなさそうだけれど。

食事を始める前に林檎酒を一口。
冷たい液体が喉をつたい、空気とともにこくりと喉がなる。

林檎のほんのりとした甘み、程よい酸味の飲みやすい林檎酒(シードル)。しゅわっとした爽快感に寝起きの口内がさっぱりとする。

「久々に生き返った気がするわ……」

「寝込んでましたからね……一人で食べても静かなだけでしたし」

あら、寂しかったのかしら。
ガレスのデレ期?
とはいえこのわんちゃん万年デレ期が来ている気もするけれど。

すっかりお腹がすいた私は、テーブルマナーに沿って食べ進める。
お肉と卵に使われたカイエンペッパーの辛味。ベーコンの旨味。
とろけるようなスープに使われたかぼちゃの甘味。

味わっては消えていくそれらを追い求めるように、自然と手が動いていく。
ゆっくりと、それでいてあっさりと、久々の食事らしい食事の時間を終えた。

「やはり食事が美味しいと幸せだわ」

「姫は食にうるさいですよね、意外と」

若干のあきれを含んだ笑いには、床に伏せていた私を焦りながら心配していた時の面影はなく、いつも通りの側近の姿がそこにあった。

「ガレス……今回のことでは心配をかけたわ」

「姫が無事ならそれでいいです」

「そう、ガレスも手袋越しとはいえ猛毒だったのだからちゃんと何かあれば言うのよ?」

「はい、ですが姫はこれからしばらく手袋の着用をお願いしますよ」

「暑苦しいのに……わかったわよ」

私は次女に渡されたシルクの手袋を受け取るとそっと指に通した。

今日の公務は国民からの手紙への返信、教会からの書類、そして数日後に控える聖夜祭の準備。

はっきり言って私単独で行う政務は少ないけれど、休んでいた分が少し溜まっているようだった。
さっさと済ませてお昼には薬室に顔を出しに行こう。リュウにも会ってお礼を言いたいし。

黙々と仕事を片付けていると、横にお茶が置かれた。

「ありがとうガレス」

談笑しながら書き物机に向きなおっていくらか時間が過ぎたころ。
耳に入ってきた雨音にわれに返る。
窓を打つ雨音に耳を澄まし、革張りのひんやりした椅子に寄りかかった。

「集中してたら結構時間たってたわ……」

「お疲れ様です、お茶もう一度いれます? もうポットは空ですよ」

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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