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「ん〜」

思わずそのまま眠りそうになって、私は重いまぶたを押し上げた。

「いえ、いいわ」

時計の短針はすでに一時を過ぎており、私は扉の前の衛兵にしばらく席を外すことを伝えると、ガレスとともに薬室へと向かった。

雨のせいか心なしか静かな雰囲気の王城を突き進む。
窓の向こうには灰色の重苦しい雲からしとしとと冷たい雨が糸のように降り注いでいる。
無彩色の空に鮮やかな花が一層目についた。

歩いているのはあの時小箱を貰った廊下。
毒に侵されたときの記憶がよみがえり、僅かに鼓動が早くなる。嫌な汗をぬぐって、私は逃げるようにして薬室へと入った。

「失礼します、ガラク薬室長」

ちょっと切羽詰った声を出したかなと思いつつ、私は視界に入った白衣姿の女性を呼んだ。

「殿下! 回復なされて良かったです」

瑠璃色の瞳をしたこの薬室の長、ガラク薬室長。突然私がやってきたことに驚いた後、やわらかく微笑み向き直った。

「先日はお世話になりましたわ」

軽くドレスのすそを持ち上げ、淑女の礼をする。

「いえいえ、今回はリュウが一番の功労者でしたよ。若いのによくやってくれました」

ガラク薬室長は優雅に左胸、いわゆる心臓に右手を添えお辞儀をした。
そんな私たちのやり取りを、ガレスはいつになく静かに見守っている。否、少しむすっとしていた。

「ガラク薬室長、リュウはどこに?」

「リュウは外の温室にいるかと思います」

「お邪魔してもよろしいかしら」

「そろそろ戻ってくると思いますよ、お茶でもいかがです?」

「ではいただこうかしら」

その時、薬室の扉が開く。
案の定入ってきたのはリュウで、私は緩みそうになる口角をなんとか平常に保った。

「ただいまもどりました……え、A王女?」

「いきなりごめんなさいね。どうしてもお礼が言いたくて……先日は助かりましたわ、お礼申し上げます」

「いや、でも……」

「いいのよリュウ、ありがたく受けとっておきなさい」

「……うん。こちらこそ、A王女が無事でよかったです……また、顔出しに来て大丈夫ですから」

無表情でいうと持っていたものだから、リュウが優しく微笑んだことに、思わず驚きそうになる。ガラク薬室長も驚きに目を見開いていたけど、気を取り直してティーセットを準備すると薬茶を入れた。

「滋養にいいものを入れましたから飲んでいってください、ほらリュウも風邪ひかないようにね」

そうして席につき、四人で談笑しながらお茶の時間を楽しんだ。

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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