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次の日の朝、私は冷たい空気の中目を覚ました。
灰色の部屋には雨音が響き、静けさと心細さが広がっていく。
指先はだいぶ完治していた。
物を持っても支障はなく、ある程度日常に戻れそうだった。
「A殿下、失礼致します」
扉の前で合図があり、私は寝台の上で上体を起こして簡単に身なりを整えた。
少しして、私に仕える侍女達が室内に入ってくる。
「おはよう」
「おはようございます、A殿下」
ざっと十名、宮廷の制服を綺麗に着こなした侍女たちは明るく、だが静かに挨拶を告げる。
その中の一人、この中で一番偉いマダムが寝台のそばに寄り深々とお辞儀をしたので、私はやわらかく微笑んだ。
「それでは姫様、お召しかえを」
私はうなずき、ゆっくりと寝台から出た。
何でもかんでも人任せは嫌いな主義なので、ネグリジェくらいは自分で脱ぐ。
別にそれくらい自分でできるし……。
肌をなでる冷たい空気に体を震わせ、シルク生地のペティコートを着る。
フリルでドレスを膨らませるものだが、普段は邪魔なので控えめなものを選んでいる。
私は王女とはいえいつもドレス姿な訳では無い。ズボンも普通に履く。
貴族として過ごす令嬢はお淑やかにいつもドレスだけれど、私は別にそれに習う必要は無いくらい自由度がある。
いつもお淑やかにしていればズボン履いていてもなにもいわれないのよ。
それに行事の時に意匠を凝らした服さえ着ていれば威厳は保たれるし、普段着用に豪奢で大きいドレスを発注するのははっきり言ってお金の無駄。
「今日はこの前作らせた水色のストライプのワンピースにしますか?」
「ええ」
ワンピースなら問題なく一人で着れる、後ろがリボンの編上げだから結んでもらわないといけないけれど。
慣れたように髪にブラシを通されるのを人形のようにじっと待てば、白銀の髪はさらさらと流れるように梳かされていく。
彼女たちは私の髪をいじるのが好きらしい、自分でも結べるけれど彼女たちに任せた方が美しい仕上がりになるし、私もその方が楽しい。
可愛らしい水色と白のストライプ模様の生地、溢れるようなフリルと黒いリボン。
似合ってるのかしら、色素が薄いからあまり淡い色は似合わないと思うのだけれど。
「とてもお似合いになられています!」
彼女たちにはよく考えてることがバレている気がするわ。
「では、朝食にまいりましょう」
マダムのその声を筆頭に、私は食事をする部屋へと向かった。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時