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私は寝台横のサイドテーブルに置かれたティーカップに口をつける。
指先が痛くて少し持つのも辛いけれど……。

鼻にすっとハーブと甘いフルーツの香りが運ばれ、心がほぐれていく。

お気に入りの紅茶を用意してくれた侍女の気遣いに笑みを零し、慣れ親しんだ味にほっとした。

この先の確定事項は、とにかく早急に毒薬投与をしなければならないこと。
時期を早めなければならない、本来ならば二年ほど後の予定だったけれど、既に命を狙われてしまった。

周囲を安心させるためにも、始めなければならない。苦しいかもしれないし痛いかもしれない。
もしかしたら今回よりも痛くないかもしれない。
それか、ただただ苦しいだけの、もはや死んだ方がマシだと思うほどのつらい薬かもしれない。

でも、考えるだけ無駄なことだ。

嫌なことから目を背け続けることはしてはいけないし、みっともない自分勝手。
王女である自分に何かあってはいけない、何かあればその分周りに迷惑がかかる。

どの道やることだったわ、時期が早まっただけ。

でもやっぱり、怖い……。

「……はぁ」

そういえば、この前音楽家に作らせたワルツがあったな。でも今はヴァイオリンもピアノも指が痛くて弾けないわ……。楽譜だけでも読み込もうかしら。

気分転換に窓を開けさせれば、さわやかな空気と鮮やかな薔薇が五感に飛び込んでくる。部屋の隣にある空中庭園の薔薇だ。

砂糖菓子のような香りを放つガーネットの薔薇に手を伸ばそうとして、戸惑った。

きっと繊細な花は落ちてしまう、この指先の刺激ひとつで。
それと同じく、自身の選択は今もこれからも人の命を左右するものになり得るのだ。
自分の毒への認識が甘かった。きっともっと警戒のしようがあったはずなのに、このままではこれから命に危険がある。

「毒が甘ければなあ……飴玉みたいに」

わざと声に出した往生際の悪いその言葉は誰かに聞こえるわけでもなく、飲もうとした紅茶にそっと溶けた。

こうして静養している間に、まだまだ考えなくてはいけないことがある。

王位継承権第三位の私を殺す理由。

私怨でなく王族だからという可能性が高いけれど、もし私怨だとしていつどこで誰の恨みをかった……? わからない。
もし継承権狙いで私を殺しに来たのなら、兄達も危ないということになる。

しばらく警戒態勢ね。
このような事態はそうそうに収束へと向かわせなければ。

本の背をなぞり、目を伏せた。

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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです!( ^ω^ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天泣 | 作成日時:2017年11月29日 22時

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