閑話-花緑青の正体2- ページ22
今のおれがあるのは、あの時Aに出会ったおかげだと思う。
でも互いに会っていたのは年齢が一桁の頃。
会わなくなって仕事や研究に没頭するようになったら、この身分違いの交友関係は薄れ、記憶の大切な部分から遠のいていく。
案外その時はすぐやってきた。
おれの父が亡くなり遠い親戚に引き取られたから。
子供一人が会いに行ける距離ではなくなってしまい、最後にした約束を果たせぬまま俺は彼女と離れた。
それから何年経ったのだろう。
彼女に触発され始めた薬学で学者として早い段階で成功したおれは、ウィスタル城の薬剤師の試験があると知った時には足がそちらに向かっていた。
城は違うけれど、もしかしたら。
そんな思いもあったのかもしれない。
Aが北の城からウィスタル城へと居を移したと聞いた時、胸が高鳴った。
再会できるかもしれない。
ただもしかしたら、おれのことなんか忘れているかもしれない。
現実は、その通りだった。
ある日おれの元に来た患者が、彼女だった。
以前より綺麗になったAは、あのお転婆はなりを潜めすっかり淑女のようになっていた。
少し寂しかった。
おれを覚えているのかと少し間をとってみるが、彼女は無反応でぼんやりとしている。
「……王女殿下、どうしましたか？」
おれがそう声をかけると、彼女ははっと意識を戻す。
本当は、昔のようにAと呼びたかった。
「その、実は野良猫に引っかかれてしまって……水で洗ったのですが血があまり止まらなくて」
やっぱりかわらない、少し抜けているところ。
でも、彼女はおれのことを覚えていない。
それなら、初対面として始めよう。
少し難しいかもしれないけど、正しい距離の取り方もわからない。
うまくできないかもしれない。
それでももしかしたら、思い出してくれるかもしれない。
Aにはちゃんと王女をつけて、彼女のお転婆癖は知らないフリをして、ただの最年少薬剤師のリュウとして、彼女ともう一度。
友達になろうと誓った。
また遊ぼうと、会おうと約束したから。
あの時の約束はこれから果たすよ。
A＿＿＿＿。
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天泣tenkyu(プロフ) - 黒髪の白雪姫さん» こちらの作品も読んで頂けるとはっ、とても嬉しいですありがとうございます(*^_^*) (2018年2月5日 23時) (
レス) id: 141d644f20 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪の白雪姫 - お久しぶりです(〃^ー^〃)この作品にお邪魔します♪凄く面白いです！( ＾ω＾ ) (2018年2月4日 16時) (レス) id: efdbcf38a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天泣 | 作成日時：2017年11月29日 22時
