ティアドロップ ページ45
｢じゃあ、なんで痕跡を残すような真似なんてしたんだ？｣
風丸が突きつけたのは御剣のトレードマークである黒いリボン。夜風にふわりと揺れるそれから御剣は目を逸らし、それは、と口篭る。
｢引っ掛けて解けた、なんて言うなよ。どう考えてもお前の身長じゃ引っ掛からないような位置に、しかもご丁寧に長さを揃えて掛けてあったんだからな。｣
｢……｣
｢御剣、いいんだよ。お前が何を言ったって誰も咎めやしない、自我を表に出していいんだ。だってお前は初めから人形なんかじゃない。助けを求めたって、自分の身を守ってほかのこと全部考えなくたっていいんだ。もっと自分勝手になってくれよ、自分勝手に気持ちをぶちまけるのは、俺たち子供にはまだ許されているんだから。｣
それは、今までの御剣を根幹から覆すような言葉たちだった。
御剣が今まで必死に封じてきた自我の一切を、あろう事かぶちまけても良いと風丸は言ったのだ。
それを皮切りとしてありえない、と口をつくよりも早く、一切塞き止めていた感情の奔流の方が溢れ出した。
……だって、そんなこと、一度も言われたことがない。私はそれを上手くやるだけの方法を知らない。
全部否定されたから、封じてもそれに気づかれることがなかったから、それをしなくたって特別困ることなんてなかったから。
……私は、それが許されていないと思っていたから。私の恋も自我も、人のそれを逸脱した得体の知れない何かだとばかり、今も思っているから。
｢御剣、"お前の願いはなんだ"？｣
それは、いつか御剣が一星に問い掛けたものだ。
そしてその意味合いもまた、彼女がそれを言った時のものとまるっきり同じものであった。……叶える為でなく、自分自身を見つめるための問い。彼女がずっと避けて通ってきた道に、風丸はいとも容易く導いた。
｢……わた、しは、みんなと……ちがう、本当は、そんな、無邪気な理由なんかじゃない、私は……
私は、
みんなとサッカーしたいのも本当だ、だけど、私は、ずっと、ずっと……!!!｣
涙が零れる。それにつれて言葉が詰まっていく御剣の両肩を柔く掴み、そっと自分の方へと近づける風丸は、穏やかな笑みを浮かべ、御剣の額に自身のそれをくっつけた。
｢……ずっと、それが聞きたかった。｣
そのたった一言で、御剣の言葉は全て肯定された。
そして同時に、御剣Aという本来の自我を初めて認められた瞬間でもあった。
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2022年2月19日 19時) (
レス) @page50 id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 御剣さん誕生日おめでとうございます！こんなにログイン出来ないの悔しいって思ったの初めてかもしれない…これからもずっとゆきさんと御剣さんを応援しています！！ (2019年6月14日 16時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Rin?^^*(プロフ) - 御剣さん本当に好きです！この先の展開も予想がつかずいつも楽しみにしています！更新待ってます、頑張って下さい！ (2019年6月9日 21時) (レス) id: ed59144b66 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ろーださん» へァ?!!!!!!!本当ですか……?!!!うちの子が人様のご縁になるとは……!!こちらこそうちの子を出会いのきっかけにして頂いて、ありがとうございます!! (2019年4月19日 17時) (レス) id: 05b431dc35 (このIDを非表示/違反報告)
ろーだ(プロフ) - 聞いてください、ゆきさん！御剣さんの話題で友達ができました！これも、御剣さんの生みの親であるゆきさんのお陰です！！これからも、更新頑張ってください！！！ (2019年4月19日 15時) (レス) id: b040f787bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年2月13日 20時
