虚のうつしみ ページ40
暗がりで目を覚ます。どうやらあれから眠ってしまっていたようで、不自然な体制を維持していた身体は僅かに悲鳴をあげ、その不愉快さに眉を顰めた。
｢……いま、何時だ。｣
徐ろに周りを手探り、布団とは明らかに違う硬質な感触に触れると何だかそれが妙に安心感を誘い、形を確かめるように手に取った。
デジタル標識の時計は午後9時を少しすぎたところを表しており、随分と眠ってしまっていたことを知らしめられた。
夕飯の時間はとうに過ぎており、今から食堂に行こうにも誰もいないのは明白で。
腹を空かせている訳でもないのでそこは問題ないのだが、心が、空っぽだった。限界を超えてしまった心は押し潰れるのではなくどうやら器から全て溢れて、かえって空虚で軽々しくなるものらしいことを実感した。
……心が、軽すぎる。
軽い、という言葉は"軽やか"とか"荷が軽くなる"とか、大体はいい意味で用いられることの方が多い筈なのに、この軽さは、重いよりもタチの悪いものだと、そう思った。
ふらりと身体を起こし、この空虚をとにかくどうにかしたくて自室を後にした。
･
《……で、なんで俺に連絡寄越した。》
｢うるさい、私だって御免蒙りたいんだわ。｣
穏やかに夜風が舞うテラスへと場所は移り、何を血迷ったのか私は佐久間の番号へと連絡を入れていた。
《こういう時は風丸じゃねぇのかよ。》
｢こういう時だから駄目なんだって……もう駄目なんだ、何もかも。｣
むしろあの人達と直接対面したお前の方が都合がいい、とは口が裂けても言えない。そして何より、自身の行動を私が一番理解出来ていない。
《おい、本当にお前、どうしたんだよ。》
｢……なあ佐久間、私思うんだ。このチームには、私がいなくてももう大丈夫なんじゃないかって。裏の要を担ってきた自覚はある。けど、私が抜けた穴を埋めるだけの人材はもう揃っている、ならもう、私がいなくても、もう平気なんじゃないかって。｣
自分でも驚くくらい平坦な口調だった。自身から感情が消える感覚は幾度となく経験したが、感情がいっぱいいっぱいでもこのように抑揚のない言葉を出せるのか、と自分自信に驚きを抱いた。最も、今となってはこちらが私の本質であるのかもしれないが。
｢……変な事言った、忘れろ。｣
《答えになってないぞ……聞いてるのか?!》
｢このこと誰にも言わないで。急に悪かったな、それじゃあ。｣
《おい待てみつ―――…》
……本当に、今の私はおかしいことだらけだ。
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2022年2月19日 19時) (
レス) @page50 id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 御剣さん誕生日おめでとうございます！こんなにログイン出来ないの悔しいって思ったの初めてかもしれない…これからもずっとゆきさんと御剣さんを応援しています！！ (2019年6月14日 16時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Rin?^^*(プロフ) - 御剣さん本当に好きです！この先の展開も予想がつかずいつも楽しみにしています！更新待ってます、頑張って下さい！ (2019年6月9日 21時) (レス) id: ed59144b66 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ろーださん» へァ?!!!!!!!本当ですか……?!!!うちの子が人様のご縁になるとは……!!こちらこそうちの子を出会いのきっかけにして頂いて、ありがとうございます!! (2019年4月19日 17時) (レス) id: 05b431dc35 (このIDを非表示/違反報告)
ろーだ(プロフ) - 聞いてください、ゆきさん！御剣さんの話題で友達ができました！これも、御剣さんの生みの親であるゆきさんのお陰です！！これからも、更新頑張ってください！！！ (2019年4月19日 15時) (レス) id: b040f787bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき | 作成日時：2019年2月13日 20時
