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また表情を曇らせた一星は、苦悩しながらも、ボールはキープし、灰崎へとパスを回し、野坂の方を見遣った。
……アンドレアスの狙いは野坂を潰させることか。まったくなんてわかりやすい。
両手で前髪を搔き上げるように顔を覆う一星の雰囲気が一変した。
「"……助けて、兄ちゃん。"」
それは、今までの一星とはまるで違っていた。
先程までの一星は、罪悪感と使命感の狭間で、自分のしてきたことの結末に怯えていた。
しかし、今の一星は違った。怯えている、という状況こそ同じだが、前述とは違い、外部のあらゆる要因に怯えている。まるで、外の世界をろくに知らない子供のように。
「…光……!!」
しかし再び前者に戻り、弟の名前を口にした一星は、怯えた様子を仕舞い、強気な表情になった一星の隣に野坂が並び立つ。
「ここは守るよ、一星君。」
素知らぬ振りで一星に近づく野坂に対し、私の目の前にいる灰崎はイライラと不快指数を積み上げていた。
「野坂の奴、また一星に近づきやがって…無防備すぎんだろ……!!」
「皇帝サンには何か考えがあンだろうよ。」
不動……灰崎のいい抑止になって正直とても助かる。
私、こういう時大体野坂と共謀してるから下手に何も言えないんだよな。そしてそれを灰崎もわかって、私が核心に触れること言っても全貌は明かさないことを知っているから余計イラつかせちゃうし。
「灰崎……あんま野坂に構ってもらえないから面白くないのか?」
「何でそうなんだよ……マジ顔で言うのやめろ!!」
「オラ、後輩イジめてねェでポジション戻るぞ。」
隙あらば灰崎をからかっていると、不動首根っこを掴まれて連行された。あ、まってまって、首、首。
試合再開のホイッスル。
もう一度オーバーヘッドをかまそうと高く飛んだ野坂のところへ、一星も文字通り飛んで行った。そして、野坂の頭の方へスパイクを向けた。
息を呑んだ。
フィールドも、
ベンチも、
観客でさえも、かもしれない。
白昼夢のような時が終わった。
……一星のスパイクは、野坂ではなく、ボールのみを蹴り落とした。
無理に体制を変えたのか、受身を取るような素振りも見せず、一星は野坂の下敷きになる形で落下した。
自分でも何をしたのか分かっていないような、呆けた顔をして、一星は人工芝に仰向けになっていた。
上体を起こした一星に影を挿したのは、極めて穏やかな微笑みを称えた野坂だった。
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moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2022年2月19日 19時) (レス) @page50 id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 御剣さん誕生日おめでとうございます!こんなにログイン出来ないの悔しいって思ったの初めてかもしれない…これからもずっとゆきさんと御剣さんを応援しています!! (2019年6月14日 16時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Rin?^^*(プロフ) - 御剣さん本当に好きです!この先の展開も予想がつかずいつも楽しみにしています!更新待ってます、頑張って下さい! (2019年6月9日 21時) (レス) id: ed59144b66 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ろーださん» へァ?!!!!!!!本当ですか……?!!!うちの子が人様のご縁になるとは……!!こちらこそうちの子を出会いのきっかけにして頂いて、ありがとうございます!! (2019年4月19日 17時) (レス) id: 05b431dc35 (このIDを非表示/違反報告)
ろーだ(プロフ) - 聞いてください、ゆきさん!御剣さんの話題で友達ができました!これも、御剣さんの生みの親であるゆきさんのお陰です!!これからも、更新頑張ってください!!! (2019年4月19日 15時) (レス) id: b040f787bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2019年2月13日 20時