みつるぎ短編／弐

無印 そう言えば今日は ページ5

刺すような肌寒さが続く休日冬の朝から昼、今日も今日とて雷門中サッカー部一同は寒さに負けずに、ボールを追いかけながらグラウンドを走り回っていた。



｢ひぇえ……冷たいねぇ…｣
｢さすがに冬場は堪えるわね……｣

練習終わり、私は秋と並んで、グラウンドから少し離れた給水所でボトル洗浄に励んでいた。
真冬の、しかも冷水を素手で触るとかいう苦行をかれこれ10分と少し。
ボトルに残った水滴がキラキラと反射している。これが夏場ならば気分がよかったのだが、残念ながら今はその真逆の季節である。

｢……これでラストっと…終わったー!!｣
｢お疲れ様Aちゃん。さ、早く片付けて向こうの片付け手伝いましょう。｣
｢はーい。｣

籠をそれぞれ1個ずつ持ち上げ、早歩きで部室の方へ向かう。

｢そう言えば……今日はやけに皆テンション高いけどどうしたんだろ、なんかあったっけ。｣
｢今日は確か……クリスマスイブじゃなかったかしら。それで気分が上がってるのかも。｣
｢もうそんな時期か。……ああそうだ、昨日野郎どもが、クリスマスパーティーだカラオケ行くぞ、とかなんか騒いでたな。それか。｣
｢ふふ、後に楽しみが待ってると不思議と張り切っちゃうわよね。｣
｢わかる。私も帰ったらおばあちゃんがおやつとお茶用意して待っててくれてるって思うと1日頑張れる。｣
｢(なんて可愛い理由なの……)｣

他愛のない世間話をしながら部室に辿り着き、手早くボトルを片付けてしまい、今度はグラウンドの方へ足を向けた。
ストレッチをしている選手達を横目にボール磨きを手伝う。

｢……寒いわね。｣
｢ねー……冬ってさ、天気いい日の方が寒く感じたりしない？｣
｢確かに……｣
｢それ分かります…なんかこう、寒さの種類が違うと言いますか……｣
｢湿度とかの違いなのかな？｣


マネージャー5人でボールを磨く手を止めずに談話していると、クールダウンが終わったのか、円堂がマネージャーに集合をかけているのが聞こえた。
それに春奈が元気よく、はーい!!と返事を返し、それに伴い私達も一旦作業を中断して選手陣の方へ合流した。

軽くミーティングを済ませると、男子達は一斉に部室へと駆け込んでいった。……部室がドタバタ揺れたような気がする。サザ〇さんのエンディングかな。

｢……あいつら現金だな…いいだけ動きまくって疲れてるはずなのに……｣

思わず苦笑を漏らしながら、残り僅かの作業を片付けるべくボールへ手を伸ばすのだった。

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