光へ連れ出して【天馬司】【神代類】 (ページ6)

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・(途中から類 side) ページ6

ついにこの日がやってきた…
何回ライブをしててもやっぱり大勢の人の前に立つことはいつになっても慣れない
…神代くん来てくれてるかな

スタ「AYAさん時間ですよ」

「分かりました」

時間が経つのは早い…
まだ真っ暗な照明の付いていないステージへと向かう
リラックス、リラックス…
自分を信じて歌うんだ

＊＊

前にはたくさんの観客
衣装を着てマイクを手に持つ
此処からは私だけのステージだ

全力で楽しむんだ

＊＊＊＊＊＊＊＊＊

類 side

Aくんのライブが始まった
学校で見た時よりも表情が生き生きとしている
歌うことを全力で楽しんでいる

彼女の歌声は不思議だ、今までは動画でしか聞いていなかったけれど…
温かい声でまるで包み込まれているような…
観客全員を魅了する声だ

自分が作詞作曲した訳ではないのに
自分がその歌の主人公だったり感じたことを声に載せている感じだ
周りを見れば全員が彼女に釘付けになっている
…そんな僕も虜になってしまいそうだよ

歌い終えたのだろう、彼女は夢について語り始めた

「私の夢は自分の歌でみんなを笑顔にすることです」

「心の底から温まるようなそんな歌を歌っていきたい」

夢…か

僕も中2だ、将来の夢を決めなければならない
別に確定させなきゃいけない…という訳では無いけど

夢の話をしている彼女は楽しそうだった
あぁ僕も、そんなふうになれたのなら…
…彼女が少し羨ましいよ

.

モブ「そんな歌で笑顔にできる訳ないだろ」

「……ぇ」

モブ「そんな下手な歌で俺たち全員を笑顔に出来るなんて思うなよ。世界はお前が思うよりもそんな簡単に笑顔にできない」

甘えんな

ステージの一部から飛び交う彼女への批判の言葉
それを止めようとファンの人たちは動き出す
僕は彼女の方を見た

類「＿！？」

「……笑顔に…出来ない…？」

絶望した声色で、顔で呟く彼女
その声は周りには聞こえていないのだろう…だけど僕の耳にはちゃんと届いた
マイクがステージに落ちて彼女は崩れる

「…あ…あぁ…そうだ、こんな歌で…笑顔になんか…」

ダメだ、これ以上彼女をこの場に居させては
普通ならスタッフが出て来るはずなのにステージ裏からは誰も出てこない
一体何をしているんだ

ステージに立つことは僕はしたことがない
でも、彼女を…助けるためだ
人肌脱がなきゃいけないね

僕は彼女がいるステージへと歩いた